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65.究極の選択 [ 66/72 ]


 ボロ雑巾のようにズタボロになったラルゴを足蹴にしながら、聞き出した情報は聞くに堪えないものだった。
「常々思っていたけど、あんたたち馬鹿なの?」
 ハァと悩まし気に吐いた溜息に対し、イオンが傷付いた表情を浮かべ涙ぐんでいる。
「それって僕も入っているんですか?」
「髭一味のことです」
 スパンッと言い切ると、彼はホッと安堵の息を漏らしている。そんなに嫌か同類と見られるのか。
「勝算がない上に、理論的に成り立たない幻想を抱くあたり中二病より酷すぎるわ」
「……貴様に何が分かる。預言に縛られぬ世界を求めて何が悪い!」
 怨念が籠ってそうな声音で唸るように吐き捨てるラルゴに、私は白けた目で彼を射抜いた。
「何のアクションも起こさず万人に自分のことを理解して当然だと言うの? 傲慢ね。大体、預言が憎いくせに教団に従事している事自体矛盾しているわ。預言への意識改革すれば良かったんじゃないの? 何の努力もせずに預言のせいにして不幸のヒーロー気取りするの止めてくれる。本気ウザイわ」
「五月蠅い!! そんなことで預言がなくなるならやっている。なくならないから劇薬が必要なのだ!」
 私は、五月蠅いとばかりにガンッとラルゴの頭を思いっきり踏みつけた。私の体重では、左程効果は薄いだろうが腹癒せにはちょうど良いだろう。
「世界中の人間が、毎日預言を詠んで貰っているとでも言うのか? 預言を詠むのに高額なガルドを支払ってること自体教団員なら知っているだろう。世界の半数以上は年一回預言を詠んで貰えれば良い方だ。酷ければ、個人ではなく村や町で預言を詠まれていることもある。預言なんて詠まずとも人は生きていけることを多くの人間は知っている。彼らから意識改革をすれば良かったのではないのか?」
「それは……」
 私の指摘に、ラルゴは口ごもり言葉を濁している。どうやらその考えに気づいていなかったらしい。流石髭の部下、阿呆としか言いようがない。
「人類とレプリカを挿げ替えると言うのならば、お前も殺されると何故気付かない」
 これも気付いていないんだろうなと指摘してやれば、奴は何を言われたのか理解出来なかったのか阿呆面を晒している。
「レプリカの世界を創る上でオリジナルは要らないのだろう? あの男のことだ。用が済めば同士だろうとその手に掛けるだろう。まあ――レプリカに挿げ替えたところで立ち行かなくなり飢死するのが関の山だ」
「……どういうことだ」
「刷り込みで知識はあっても知恵がない。経験もなければ作物を育てるのは無理だろう。どんな職業でも一夕一朝で出来るものじゃない。そんなことも分からないと言うなら真性の愚か者だ」
 フンッと鼻で嗤い飛ばす私に、ラルゴは最初から破綻した計画を再認識させられ顔面蒼白になっている。
「選択肢をあげる。私に協力するか、それもと反逆で首を切られるかどちらが良い?」
 究極の二択を用意して私はニッコリと笑みを浮かべた。

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