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64.その言葉を合図に尋問という名の拷問が始まった [ 65/72 ]


「なあ、あれラルゴとイオンじゃね?」
 ボソリと呟かれたルークの言葉に、私の笑顔がキラキラしく輝いていたと後に同行していたジョゼットが証言した。
「ここまで人が入り込んでいるのに気付かないって軍人失格ね」
「自信の表れでは?」
 ジョゼットの突っ込みに対し、ルークがクククッと喉の奥で笑いを噛み殺している。
「そりゃないだろう」
「そうですの。ゴリラは、ご主人様にボコボコにされているですの!」
「ミュウ、誤解を招くような言い方をしないでしょうだい」
 上機嫌で広聴しまくるミュウを睨み付けると、ルークが笑いながらそれを肯定している。
「実際、棍で殴りつけて伸したじゃん」
「あれは不意打ちで出来た技よ。ガチで勝負したら負けるわね、私」
 無理無理。私か弱いもん。そう言い放てば、物凄ーく可哀想なものを見るような視線がグサグサと突き刺さった。
「ご主人様がか弱ったら、人間の雌は全て貧弱になってしまうですの。お世辞にもか弱いとは言えませんの」
などとミュウが失礼なことを宣った。
「ミュウ、お前偶に良いこと言うな!」
「ルーク、それはないでしょうっ。そこはかとなく失礼だ」
 ゲラゲラと笑うルークを筆頭に、同行者からも笑いが上がる。
「貴様ら……いつの間に入り込んだ」
 私たちの騒ぎ声が聞こえたのか、ラルゴは漸くこちらに気付いたようだ。
「2時間前には遺跡内を探索してたわよ」
「結構広くて彼方此方迷ったよなぁ」
「お蔭で簡易ではありますが地図も完成しましたし、帰りは迷うことなく戻れますね」
 ラルゴの問いに心優しい私はキッチリ答えてあげることにした。ルークとジョゼットがそれに乗っかり世間話を繰り広げていたが。
「……何用でここにいる」
「それはこっちの台詞よ。ザオ遺跡はキムラスカ領ということを忘れているわけではないわよねぇ? 貴方たちの方こそ此処で何をしているのかしらぁ」
 ニッコリと笑みを浮かべて威嚇していると、ルークが袖を引っ張ってくる。
「ティア、ティア、悪人面になってる」
「善人面した悪党より万倍マシよ。で、そこ。脳筋軍人、私の質問に答えなさい。さもなくば……」
 一旦言葉を切った私を見たイオンは、涙目になりながらプルプルと小鹿のように震えていた。
「……さもなくばどうすると言うのだ」
 眉間に皺を刻みながら訝しむラルゴに、私はドス黒い笑みを浮かべて言った。
「私が直々に尋問してあげるわ。やり過ぎてうっかり死んじゃうかも」
 うふっとハートマークを飛ばして宣言したら、ラルゴの顔が盛大に引き攣った。
「取敢えず跪きなさい。ディバインセイバー!」
 ズガンッと大きな音を立てて雷がラルゴの頭上に落ちた。
 プスンプスンとミディアムに焦げたラルゴが、どさりと砂の上に倒れ込んだ。
「え? もう終わり。弱すぎじゃない!! ちょっと、起きなさいよ」
 折角これから色々と高等譜術を試そうと思っていたのに、呆気なく倒れるなんて予想外も良いところだ。
 ラルゴの胸倉を掴みガクガクと揺さぶるが、一向に目を覚ます気配がない。
「ティア!! それくらいにしてあげて下さいぃ! 彼が死んじゃいますぅぅう」
 予めマーキングされて無傷だったイオンが、腰にしがみつき私の暴挙を止めている。
「回復してやろうぜ」
 あまりにも哀れだと思ったのか、ルークがフォローを入れた。
「それだわ! 回復と攻撃を繰り返せば色々試せて情報も引き出し一石二鳥。慈悲深いルークに感謝しなさい。 癒しの光よ、ヒール!」
 私の言葉に、それは違うと誰もが思った瞬間だった。
「さあ、覚悟は良いかしら?」
 その言葉を合図に尋問という名の拷問が、延々と続けられたのだった。

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