小説 | ナノ

初代|切欠は貴方H [ 14/145 ]


 清十字怪奇探偵団一行は、新幹線に乗り岩手へと向かっていた。
 新幹線の席順でも大揉めに揉め、私の左右が氷麗とゆら。目の前がカナで、その左に巻、右が鳥居といった感じで女の子が集結している。
 新幹線のイスを回し向かい合わせるようにセットし座っているのだが、隣を見ると男四人固まっていて誰かがむさ苦しいと虚仮下ろしていた。
「そう言えば、妖怪探索と言ってましたが岩手に行って何するんですか?」
 今一ピント来ない合宿の趣旨に疑問をぶつけたら、待ってましたとばかりに清継が喋りだす。
「鼬の妖怪に会いに行こうと思ってね!」
「イタチですか?」
 鼬といえば、別名オコジョと呼ばれており気性は荒い動物だ。
 ぬらりひょんと出会ってから、彼の下僕と顔を合わせる機会もあったが鼬の妖怪は初めてだ。
「鼬の妖怪と言っても鎌鼬じゃない。見越し入道さ!」
 聞いたことのない単語に、私は目をパチクリする。そんな私を見かねてか、ゆらが細くしてくれた。
「夜道や坂道の突き当たりを歩いとったら、僧の姿で突然現れ見上げれば見上げるほど大きくなる妖怪や。見続けていると死ぬとも言われとるが、上から下に見下げて『見越した』って言えば消えよる」
「へー、ちゃんと対処法もあるんだね。でも、何で見越し入道が鼬の妖怪なの?」
 鳥居の疑問はもっともで、私も答えが知りたくてゆらを見ると彼女はコホンと咳払いし、話を続けた。
「南会津郡檜枝岐村の伝承に鼬が化けたもの書かれた書物があんねん。入道の巨大化につられて上を見上げると、その隙に鼬に喉を噛み切られるという話や」
「……見た目は可愛いのに、凶暴な性格してるんですね」
 私のコメントがツボに嵌ったのか、リクオは肩を震わせて笑っている。
 突然笑われた意味が分からず首を傾げていると、思い当たる節があったのか隣に座っていた氷麗とゆらも笑みを浮かべていた。
「本当、その通りよ」
 喉の奥で笑いを噛み殺す彼らに私はついていけず、はぐらかされるままに別の話へと摩り替えられてしまったのだった。


 岩手県についた私達は、まずは宿へという事で旅館幻湯夏油へ来ていた。
「うわぁー、凄い! 豪華じゃん」
 巻の感嘆に、清継は胸を張って自慢する。
「そうだろう。祖父が、ここの温泉に惚れ込んでいてね。年に数回は、足しげく通うほどなんだよ」
 純和風を思わせる古きよき建物が、私達を過去へとタイムスリップさせたかのような感覚に陥る。
「清継君のおじい様は、素敵な趣味お持ちなんですね」
「それに比べて、清継君は成金趣味だけどね。残念だ」
 私の言葉に対し、鋭い突込みを入れる鳥居に彼は撃沈している。
「毎回、合宿は散々な思いをしていたけどやっと普通? 寧ろ温泉旅行? 今回ばかりは、見直したわ」
 巻の言葉に、力強く頷く彼らを見て相当苦労をしているようだ。
「取敢えず、荷物を置いて昼食にしない?」
 リクオのさりげない言葉に、清継弄りから昼食へと興味の対象が映る。その手腕は鮮やかだ。
「そ、そうだね。チェックインしに行こうか! 昼食を取りながらGWの予定を発表するよ」
 復活した清継を先頭に、私達は旅館に足を踏み入れたのだった。

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