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初代|切欠は貴方G [ 13/145 ]


 GW当日、ぬらりひょんと約束したとおり朝に彼の携帯に連絡を入れ待ち合わせ場所となっている浮世絵町駅へ来ていた。
「家長さん、花開院さん、お早う御座います」
 既に来ていたカナとゆらに声を掛けると、素敵な笑顔で挨拶を返された。
「お早う佐久穂ちゃん。合宿の間、よろしくね」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「お早う佐久穂。あんたも、清継君の暴走に付き合わされて難儀やな。何があってもうちが、妖から守ったるから離れたらあかんで」
「ありがとう御座います」
 ゆらの頼もしい言葉に、お礼を言うとカナから待ったの声が掛かる。
「私が、佐久穂ちゃんを守ってあげるの! ゆらちゃんは、他の皆を守れば良いんじゃないかなー」
「うちが守らんでも死なんわ。特に、家長さんとか殺してもしななさそうやね」
「ゆらちゃんの破軍みたいで嫌なんだけど。ゆらちゃんこそ、没後に破軍の仲間入りするんでしょう」
 ウフフ、オホホと私には分からない単語が私を挟んで飛び交っている。
 目を白黒させていると、
「佐久穂さんが困ってるでしょう。お早う、朝から大変だね」
 リクオから声を掛けられた。その隣には、氷麗が立っている。
 浮世絵高校三大美少女と言われるだけあって可愛いし、二人揃うと絵になる。
「奴良君、お早うご……」
「佐久穂! お早う」
 ドンッとリクオを突き飛ばし抱きついてきた氷麗に、私は思わず彼女を受け止める。
「及川さん、お早う御座います」
「つららって呼んで。呼んでくれるまで離れない」
 ゴロゴロと甘えてくる氷麗に、周囲の目が冷ややかだ。
「えっと、氷麗さん……奴良君が可哀想なことになってます」
 不意打ちのボディーブローを食らったリクオは、横腹を押さえ蹲っている。
 彼女は私とリクオを交互に見た後、胸に懐きながら言った。
「リクオ君、そんなところでしゃがんでいたら通行人の邪魔になりますよ」
「氷麗のせいだろう!」
「そうでしたっけ?」
 リクオは食って掛かるが、彼女は強かにすっ呆けた。
「今日は楽しみね! おまけは、邪魔だけど」
 満面の笑顔で旅行が楽しみだと語る彼女のおまけって何だろう。
「及川さん、佐久穂ちゃんから離れなさいよ!」
「うるさいわね、家長カナ。あんたに関係ないでしょう」
「さっさと離れや。祓うで!」
「私に指図しないで、陰陽師少女! 佐久穂はね、私と居たいのよ」
 またも私を巻き込んで争いが始まった。ギャイギャイと言い争う彼女達に、意見できるわけもなく私は困った顔でその渦中にいた。
「佐久穂、おっはよー」
 巻の声がしたかと思うと、背後からムニュッと胸を鷲掴みにされました。
「フニャァァアアーッ!」
 胸の感触を楽しむかのようにモミモミと胸を鷲掴むのは巻で、毎度のことなのだけど恥ずかしいし止めて欲しいと涙目で訴える。
「巻さん止めて下さい。どーして触るんですか」
 胸を隠し巻きに詰め寄ると、
「やっぱ、佐久穂の乳揉まないと一日が始まらんのだよ」
と胸を張って威張り、高笑いしている。
「だからって……立派な痴漢ですよ!」
「良いじゃん。減るもんじゃないんだし」
 全然懲りない彼女に私は、極力近寄らないで置こうと距離を空ける。
「そのうち、佐久穂ちゃんに訴えられるよ。佐久穂ちゃん、お早う」
 呆れた顔で巻を見ながら、私の頭を軽く撫でる鳥居に泣きつく。
「お早う御座います、鳥居さん」
「やあやあ、みんな揃ったようだね」
 遅れて登場した清継、島、倉田の三名が揃い。漸く清十字怪奇探偵団のメンバーが勢ぞろいした。
「それじゃあ、出発だ! 妖怪探索に出かけるぞ」
 高らかに宣言する清継に、私は恥ずかしさのあまり顔を下げてしまう。
「一番遅れてきたくせに謝罪もないのかよ」
 ボソッと呟かれた巻の毒は、ここにいるメンバー全員が思っていたに違いない。
 こうして、私達は妖怪探索ツアーへと出かけることとなったのだった。

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