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330万打企画SS紫姫和己様リクエスト@ [ 8/11 ]


紫姫和己様、企画参加ありがとう御座います。折角リクエストして頂いたのですが、近親相姦までは浮かんだのですが駆け落ち部分が全く浮かばず断念することとしました。
全く別のお話ではありますが、贈らせて頂きたいと思います。お納め下さいませ。
少陰×そこのけシリーズとなっております。


 世界を渡ると、何故か仔虎になっていた藍です。
 ここ数年は羽衣狐が復活して浮世絵町の平穏も怪しかったが、安倍晴明という爺がこの町に住み着くようになってから命を狙われるような脅威に襲われることがなくなった。
 小腹が空いたので菓子を集りに行こうと庭から出ようとしたら、首無しに声を掛けられた。
「藍、どこへ行くんだい?」
『にゃーん(菓子を集りに晴明のじーさんのところへ行ってくる)」
「散歩もいいが、ちゃんと暗くなる前に帰ってくるんだよ」
 お前は私の母ちゃんか! 呆れ半分、面倒臭い半分で私は返事の代わりに尻尾を軽く揺らして答えた。
 塀を乗り越え、歩くこと十分。町の外れにあるこれまた立派なお屋敷に辿り着いた。
 ここは、結界が張ってあり不用意に触れると一瞬で消滅してしまう。
 門前に行くと門神立っており、声を掛ければ頭を撫でてくれた。
『ニャーニャー(遊びに来たよ)』
「暫し待て、主を呼んでくる」
 一瞬姿を消したかと思うと、直ぐに戻ってくる。これもいつものことで驚かない。
 少しすると、邸の奥からパタパタと走る足音が聞こえてきた。
「藍、お帰りなさい」
『みゃおぅん(お帰りって……まあ、良いや。ただいま)』
 出迎えてくれたのは、十二神将が一人天后だ。可愛いもの大好きな彼女は、いつだって私を抱き上げそのまま豊満なお胸へとダイブさせる。
 おっぱいは気持ち良いんだけど、ギューギューと締め付けるのは止めて欲しい。
「なかなか帰ってこないから心配したのよ」
『ニャー(そりゃ外出禁止令が出たんだもん)』
 鯉伴と一緒に食べ歩きをしていたら、とばっちり喰らって外出禁止令が発動されたのだ。
 口答えしたらおやつ抜きという理不尽さ。外に出れない間は、鯉伴に対して八つ当たりしまくったが腹の虫は治まっていない。
「藍、来てたのか」
『みゃーん(お! 物の怪久しぶりぃ)』
 片手を上げて挨拶してやると、全身の毛を逆立てて怒り始めた。
「俺は物の怪違う!」
『ニャーニャー(どっから見ても物の怪じゃん)』
 天后の腕から抜け出し、物の怪の体の上にダイブするとフギャッと何とも珍妙な呻き声を上げた。
「退け藍、重たいぞ」
『フーッ(女の子に向かって重たいとはなんだ!)』
 物の怪の失礼な物言いにキレた私は、ガブリと長い耳に噛み付いてやった。
「ギャーァァアッ!! 痛い痛い止めんか、このバカ猫」
『シャーッ!! (っんだと、私は虎だ! この何ちゃって物の怪のくせに生意気だぞ)』
 今度は尻尾に噛み付いてやるとばかりに口を大きく開けたのだが、噛み付いたのは物の怪の尻尾ではなく甘いお饅頭だった。
「玄関で騒いでいると思ったら、何もっくんとじゃれてるの」
『ミャーミャー(じゃれてない! こいつが失礼なことを言うからだ)』
「もっくんのデリカシーのなさは、今に始まったことじゃないよ」
 昌浩の言葉に打ちひしがれる物の怪。同情はしないが、相変わらず不憫な奴である。
「天后、じい様が呼んでたけど」
「藍……分かった。行くわ」
 名残惜しそうに私を見つめた後、彼女はスッと姿を消した。
「さてと、藍は俺とお茶だ。もっくんは、邪魔するなよ」
 にっこりと黒い笑みを浮かべて釘を刺す昌浩は、出会ったときよりも腹が益々黒くなっている気がする。
 昌浩の黒笑を正面から見た物の怪は、廊下の隅でガタガタ震えている。私も一緒にガタガタ震えたい。
 昌浩に首の皮を掴まれがっちりホールドされている。ドナドナの牛よろしく、私は昌浩の部屋へと連行されたのだった。

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