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330万打企画緋空様リクSS [ 7/11 ]


緋空様より連載夢主で求婚等され嫉妬する昌浩とリクエストを頂きありがとう御座います。
始終嫉妬している昌浩しか浮かばなかったのですが、ショートショートと目指してワンシーンを書いてみました。


 私は、晴明のお遣いと云う名の大きなお世話のせいで昌浩の職場に来ていた。
 成り行きで昌浩と祝言を挙げたことに不満はあれど後悔はしていない。
 それなのに目の前の男と来たら、人を捕まえたかと思うとベラベラと昌浩を虚仮下ろし己の自慢話を延々とし始める始末。
 こんなことなら、大人しく邸で過ごしていた方が何十倍もマシだ。
「まだ子供が抜け切らぬ者が夫とは藍殿を満足させることも出来ないでしょう」
 色を含んだ視線を寄こす男に、私はあからさまに顔を顰めた。
「……何が言いたいのですか」
「妻として女として昌浩殿では役不足だと申し上げているのですよ」
 ニタリと卑下た笑みを浮かべ肩を抱き寄せようとしている男の手が不意に止まった。
「左近兵衛少志、我が妻に何か?」
 柔和な笑みを浮かべているのに、目の奥は笑っておらずそのギャップに怖気が走る。
 昌浩の傍にいる勾陳を見つけ、どうやら彼女が呼びに行ったらしい。面倒臭いことになった。
「いや、あの……その、道を聞かれていただけなんだ」
 稀代の陰陽師の孫で晴明が認めた後継とあって、男の慌てぶりは見ていて滑稽だ。
「嗚呼、そうだったんですか。ありがとう御座います。でも、ご安心下さい。私がいますので」
 ドス黒い笑み一つで男を黙らせる姿は、あの狸ジジイを思い起こさせる。本人に伝えれば似ていないと否定されるだろうが、血のつながりを感じさせる。
「ああ、そうするよ」
「藍に纏わり付く害虫が多くて困る。先日も撒いたばかりだけど、もっと強力な殺虫剤を撒いた方が良いかなぁ」
 乾いた笑みを零し足早に去ろうとする男に対してなのだろう。私に語らいながら、物騒なことを宣う昌浩に男は小さく悲鳴を上げて一目散に逃げた。
 逃げた先で豪快に転んでいたのを見ると、昌浩が何かしたんじゃないかと疑いの眼差しで見やれば、彼はどこ吹く風で笑って言った。
「俺の藍に手を出そうとするから罰が当たったんだよ」
 そう主張する昌浩に、私は手を当てて溜息を吐いた。天誅ではなく、明らかに昌浩が仕掛けた人誅だろう。
「……あんたねぇ、仮にもあんたより位が高いんでしょう。揉め事起こして目を付けられたらどうするのよ」
「俺の嫁に手を出す方が悪い。じい様もそのあたり分かってくれるし、寧ろ徹底的にやれって言われてるから問題ないよ」
 昌浩の行動は、全て晴明の入れ知恵からきたものだったのか。
「そう言えば――晴明が若菜を娶った時も、言い寄ったり文を寄こしたりする馬鹿が絶えなかったな」
「……何が言いたいの物の怪」
「つまるところ、可愛い嫉妬ゆえの行動だ。お前も色々大変だろうが頑張れや」
 キョホホホと笑う物の怪が、この時ばかりはその見た目に反して可愛くないと思った。
 色々大変の部分がどう大変なのか凄く気になるが、藪を突いて蛇を出したくない私は無言を貫く姿勢に入ったが無駄だった。
「藍の用事が終わったら一緒に帰ろうね」
 ニッコリと黒微笑を浮かべる昌浩を直視し、私は顔から血の気を失った。
 ご愁傷様と両手を合わせて南無南無と宣う護衛一人と一匹に殺意が湧く。
「藍に隙があるから変なのが寄ってくるんだよ! 誰の物かしっかり教え込まないと」
 少年の域を出ない子供が、男の匂いをさせて変態発言しているとは世も末である。
 嫉妬深い夫に、私は今日は寝れるだろうかと遠い目で空を眺めたのだった。

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