宣戦布告(青大/ルドオン

 アバターと殆ど変わらないその姿に、柄にもなく高揚したこと。にこりと笑って差し出された手に、触れるのを一瞬躊躇したこと。相手に気付かれては居ないだろうけれど、自分自身は。


「や、青龍くん。時間ぴったりだね」
 待ち合わせに指定されたコーヒーショップで、カップを二つ持って笑っている男性に、思わず眉が寄りそうになった。
 はい、と渡されたカップの中身は普段飲むものと相違ない。前に頼んでたの、これでよかった?と笑う彼にはっとする。
「自分で買います、こんな…」
「まあまあ。二人きりなんだし、社会人に見栄張らせてよ。」
 大人数だとさすがにあんまり奢ったりは出来ないし、ね?などと小首を傾げるものだから舌打ちすらしたくなる。駄目だ、余裕がない。「普段の自分」を必死に取り繕いながら、青龍と呼ばれた青年はカップに口を付けた。

 ゆったりとした所作のひとつひとつが目についた。誰にでも変わらないその優しさを好ましく思っていたのは事実だけれど、今は、あわよくば綻びを見付けようとしている自分が居る。
 ネット上とは言えよく関わるようになってから、たびたび気の抜けた表情が見られるようになった。その表情を見るたびになにかが自分のなかに降り積もるような感覚があったのだ。そして、初めて本当に顔を合わせたあの日、あの時、「緊張している自分」に気付いてしまった。
 降り積もっていたものが、「ただの好感度」ではなかったことに、気付いて、しまった。

 今回二人きりなのは、半分は偶然だが半分は図ったことだ。案の定彼は、普段他の面々と居るときとなんら変わらない。私が「特別」ではない証明だった。けれど、それでいい。
「…霊亀さん、…いえ、萬亀山さん」
 普段は呼ばない本名で呼ぶ。きょとりと瞬いた眼を真っ直ぐに見詰めて、口を開く。

「待っていてください。すぐに大人になりますから」

 意味は解られなくていい。これは、「霊亀」ではない彼を手に入れるための、宣戦布告なのだから。




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お題▼
じゃあ真面目に ルドオン青大の初めての二人でオフ会で「待っていてください。すぐに大人になりますから」が入る話をくれ


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