02

【夏の暑さのせい、ではなく。】

ああ、暑い。
エアコンの壊れた部屋は、湿度も温度も最高潮、ではないのかと言うくらいに暑い。
茹だりそうだ、死ぬ。
そんなふうに考えながら、扇風機の風力をあげた。

夕方になり、割と涼しくなってきた。
汗だくになるほどじゃなくなり、快適。
そんな時間に澪は帰ってきた。
「ただいまー……って、なんてかっこしてるの慧さん。」
「おかえりー。いや、さっき水風呂入ってたから。」
ちなみに今俺は上半身裸に短パンだ。

「……へー。」
なんだ今の間は。
不意に嫌な予感がして、後ずさった。
すると、澪は急に距離を詰め、ずい、と顔を近付ける。
驚いて固まる俺をよそに、ニッコリ笑って、口を開いた。

「誘ってる?」

「……ま、さか。」
少し震えた声でそう言うと、澪は直ぐに離れた。
「……なにも、しないんだな?」
恐る恐る問うと、澪は笑顔を絶やさずに言葉を紡ぐ。

「害が無さそうってよく言われるし。」

「……皆騙されてるよな。」
そう小さく呟いた。
すると澪は、そうだね、と笑う。
……あ、この笑顔、危険。
頭の中で警鐘が鳴った、瞬間。

押し倒された。

「……っ、な、」

「まあ、ね。」
足で両腕を押さえ付けられ、身動きを封じられた。
なんてこった、油断した!
そして澪は、笑う。
とても楽しそうに、意地の悪そうな笑顔で、笑う。

「慧さんに関しては、害のほうが多いかな?」
キスが落ちた。

顔が、体が、暑くて。
澪が触れた、触れている、そんな所を中心に、熱が広がる。

部屋の気温は、さっきと変わってない筈なのに。





かわいこぶる彼のセリフ
2.害が無さそうってよく言われる


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