01
【バレンタイン】
俺の恋人は、やけにモテる。 だから、当然今日は両手に紙袋提げて帰って来るんだろう。
チョコがぎっしり入った紙袋を。
「ただいまー。」 「……おかえり。」 ほら、やっぱり。
「お前、ホント何なの?」 「人間。」 「じゃなかったら良いのに。」
溜息を吐きながら小さく呟く。 だって、こんな腹黒鬼畜な癖に猫被ってもてもてな奴と、同じ生物だなんて。 嗚呼、天は二物を与えずだとか、天は人の上に人を作らず人の下に人を作らずだとか、絶対嘘だ!
「なに、慧さん、嫉妬?」 「男として、男であるお前に対して、な。」 はっきりと言うと、澪は口を尖らせた。 「嘘でも、恋人としてって、言わない?」 「言わない。つか、嘘ついたら、それはそれで怒る癖に。」 「あは、ばれちゃった。」 へらっと笑う澪。 嗚呼、いらつく。
「お前、なんでこんなにモテるんだ。」 ぱくぱくと澪の持ってきたチョコを食べながら、問うてみた。 普通、さあ?とか、しらない、とか、本人達に聞け、とか帰ってくるはずだが、こいつは違う。 「んー……、」
「僕がかわいいからだと思う。」
ほらな! 「……馬鹿じゃねーの。」 そう言いながら、溜息をついた。 本当に(見た目だけは)かわいいから、洒落になってないんだよ。
了
かわいこぶる彼のセリフ 1.僕がかわいいからだと思う
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