犯罪係数A


『携帯型心理診断。鎮圧執行システム。ドミネーター、起動しました。ユーザー認証、此木諒介監視官。公安局刑事課所属。使用許諾確認。適正ユーザーです。現在の執行モードはノンリーサル・パラライザーです。落ち着いて照準を定め、対象を無力化してください』


いつも通りの音声が流れてくる。
もう少し簡略出来ないものかとは思うが、この段取りが重要らしい。
切羽詰まった状況下では文字通り命に関わる問題でもあるのだが、そう言われてしまえば今の俺にはどうしようもない。


「向こうは大丈夫っすかね」


二手に別れた片方を気にして、縢がそう声を上げた。ドミネーターで肩を叩きながら、前方を歩く宜野座に視線を送っている。
雑すぎる扱いを注意すべきか、一瞬だけそんな悩みが脳裏を過るがすぐにどうでもいいかと思い直す。

新人に付けたのは執行官二人。
それも、一人はあの狡噛だ。
征陸さんが一通り説明を済ませてくれてはいるだろうが、いきなりの実戦。ドミネーターの使用。戸惑う事は多いだろう。

対するこちらは宜野座に縢、六合塚に俺だ。
俺が向こうに付いても良かったのだろうが、宜野座は新人を甘やかす気はないらしい。早く現場に慣れろという事か、それとも面倒を一所に集めてこちらでさっさと今回の対象──大蔵を確保してしまおうという腹積もりか。
後者の可能性が僅かに高い。


「大蔵のサイコパスがノン・リーサルで済む事を祈ろう」

「いきなりリーサルはきついでしょうからね」

「……そう言ってもいられないだろう」

「ま、俺らがさっさとケリつけりゃいいって事でしょ?」


自分の問いを自分で答えた形になった縢だが、まったくもってその通りの内容だった。
人質の事も気にかかる。一刻も早い救助が望ましい。手遅れであった場合は……それも仕方がないが。
サイコハザードは厄介だ。
俺にはまるで縁のない話ではあるのだが。


「別れるぞ。発見次第すぐに連絡しろ」

「あぁ、分かってる」

「はいはい」

「了解」


大蔵が何処へ逃げたのか。
人質を連れながら、ではそれほどの距離は稼げないだろう。
雨はいつの間にか止みそうな気配を見せている。
それでも、先ほどの雨量から考えれば室内。
後は足で探すしかない。

←prev next→
top


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -