ある部屋にて。
男主とリヴァイとハンジ


「………………これは無理があるんじゃないか?」


目の前に並べられた変装道具。とは言えカツラだけではあるものの、机の上に広がる黒髪を眺め、そう呟く。
隣に立つリヴァイも無言のままではあるが、同じような表情を浮かべていた。


「駄目かな?」

「と言うより、無理だろう」

「いい考えだと思ったんだけどなぁ……」


残念そうに、ハンジが嘆く。

エレンの替え玉作戦。
発想は悪くはないのだろうが、人選に問題がありすぎたのだと思う。
いくらなんでも、俺たちに言うのは間違っている。


「リヴァイがやるのなら、常に目を見開いていないと駄目だろうな……エレンにしては目付きが鋭すぎる」

「そういう問題じゃねぇだろう」

「ある意味誰も近寄ってはこないんじゃないか?」

「全力で怪しまれてんじゃねぇか」

「俺よりはマシだろうに」

「てめぇがやるなら、まずその無駄な威圧感を消す事だな。隅の方で縮こまるならどうだ?」

「それでエレンに見えるかはさておき、イジメにあっているという噂でも立ちそうだな……」

「いや、二人とも。エレンから人を遠ざける為の変装じゃないからね?」


ハンジからもっともな指摘が入り、二人で口を閉ざす。
おかしい。そもそもおかしな話を持ち出したのはハンジだった筈だ。

無言のまま、カツラへと視線を映す。
無駄に出来の良い、サラサラとした輝きが机の上でその存在を主張していた。





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