エレン・ライナー・アニと教官


「オイ…あいつ…」

「ああ…アニか…」

「また教官にバレないようにうまい事サボっ ……あ」

「バレた」

「バレたな」


対人格闘術の訓練中。
二人一組で取り組む間をうまくすり抜けていたアニが、ナナシ教官に見つかる姿を丁度目撃してしまった。
声までは聞こえてこないが、何か話し込んでいる。注意でもされているのだろうか。まさかサシャに引き続き、アニまで走らされる事に…?
なんて訓練の手を止めて眺めてしまっていると、アニがぶんぶんと首を振った。


「何話してるんだ…?」

「なにも聞こえんな」


ライナーも怪訝そうに眺めている。
けれど、その答えはすぐにわかる事となった。
教官とアニが、向かい合って構えたのだ。
組む相手がいない?ならば俺が相手をしよう。
…そんな感じだったのだろうか?


「え」

「え?」


そしてあっという間に、アニが地面へ倒されていた。
何が起きたのか分からない。
起き上がったアニも目を丸くしている。
信じられない、とでも言うように、呆けているようだった。


「今のどうなったんだ…?」

「アニから仕掛けたようにも見えたが…わからん」


端から見ていても分からなかったのだ。
アニはもっと混乱しているんだろう。
ナナシ教官が、座り込んだままのアニに手を差し出す。
その体を引き上げ、一言二言話してから、教官が立ち去って行った。教官の向かった先には今の一連の出来事にまるで気付いていないコニーとサシャが、馬鹿なポーズで威嚇しあっている姿があった。


「………あ」


そしてふと視線を戻すと。
バチリと音でもしそうな程に。誤魔化しようがないくらいにそれはもうしっかりと。アニと目が合ってしまった。
ザッザッザッ、と近付いてくるアニに、オレ達は動けない。


「アンタたち…ちょっと練習に付き合って貰えるかい?」


なるほど、これが前にアルミン達が話していた、死亡フラグというやつだろうか。
いつも怖い顔してると思ってたけど…
今ほど怖いと思った事はねぇぞ…
乾いた笑いを浮かべながら、オレはライナーの背中をそっと前へと押し出したのだった



蹴り技はリヴァイできっと慣れている

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