と、そんな話をしたのがつい先程。何か訳知り顔のアルミンが口を開くよりも先に。


「ずるい」


ミカサのその一言が、滑り込んできた。
じとり、とした視線を向けられて面喰らう。


「この間、アルミンも名前で呼ばれていた」

「ミカサ、聞いてたの…!?」

「たまたま、聞こえた」


アルミンもか。
どうやら、ミカサだけがまだ名前で呼ばれた事がないようだ。
いや、そもそも会ってないだけじゃねーのか?


「………ずるい」

「ミカサ…」

「そんな顔すんなよ…」


そんな、仲間外れにでもされたような顔をしなくても。
それこそ、たまたまだろうに。

どうしたもんか。
アルミンと顔を見合わせる。


「話は聞かせてもらったよ!」

「うわあ!?」

「!?」

「ハンジさん!?いつの間に!?」


にょっきりと。
話の輪の中に唐突に顔を出してきたハンジさんに飛び上がる。
びっくりした…!気配をまるで感じなかった…!


「私に任せときなって!ナナシをここへ呼んできてあげるよ!一人だけ仲間外れーなんて事は絶対に無い筈だから、好きなだけ呼んで貰うといい!ね!好きなだけ!」

「えっ」


鼻唄でも歌い出しそうな程上機嫌なハンジさんの提案に、ミカサが戸惑ったように声を上げた。
というより、オロオロしている。
拗ねてはみたものの、本人にまで言うつもりはなかったってとこか。

エレンは私がいないとダメ、なんて、いつもオレをガキ扱いしてくる割には今のミカサだって…
まぁ、なんだ。たまには、こんな姿を見るのも悪くはない。

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