嫌いを好きにする方法 | ナノ

おめざめの現在(後)

「おはようございます、名前」

「…………?」

「今日は高校まで送りますから、機嫌直してください」

「……え?」

「昨日は無理させてすみません、悪気は…無いわけではありませんが、気は遣ってはいますよ」

「え……あ、おはよう、ございます、安室さん……え?」

「もしかして体調悪いんですか?学校休みます?」

「え?ここどこ…?」

「どこって、僕の家ですよ。名前、本当にどうしたんですか?」


家に帰っておやすみなさいと布団にもぐって眠ったはず。あれ?いい香りだと思って目を開けたら安室さんがいるんです?どうしたもこうしたも、なぜ私は安室さん宅にいて、眠っていたんだ…?やはり友と脳みそを交換するべきだったのか…?


「もしかして、目覚めのキスをご所望でした?そうでしたね。はい、おはようございます!」

「うわいりません!!待って、顔近づけるな!!色々ストップ!」

「いつもは名前がしてくれるじゃないですか」

「!?」

「…熱でもあるんですか?いつもと様子が違いますね」

「いつもってどういうことだ…!?なんで私、ここにいるんですか…?」

「昨日も家に泊まってくれたじゃないですか。恋人として時間が作れないから、週末は泊まりに来てくれると、貴女が提案したことですよ?」


こ い び と だと…え、何、これは夢なんですよね。前回同様夢なんですよね?なんで私そんなこと言ってるの?というか、え?これは…え?なんで本堂くんじゃなくて、よりによって安室さんなの?どうなってるの私の脳みそ。せっかくなら夢の中でくらい本堂くんと結ばせてくれよ。って、そもそも出逢いは昨日の夢の中だった。そっか、今日はコナンくんの世界の続きで、安室さんと恋人であるらしいパラレルワールドなのですね。


「あ、それはどうも…気付きませんで…あ、顔近づけないでください」

「昨夜の甘えたと違って、朝はつんつんしてますね。そんなところも可愛らしい…!」

「おまわりさんこっちです」

「は?」

「朝ごはんなんですか?って言ったんですけど…」

「…ああ、軽めにと言っていたので、わかめスープとおかゆです」


目を開ける前にかぐったいい香りは、おそらくスープの匂いなんだろう。あながち冗談でもないけど、小声でおまわりさんこっちですって言ったときの安室さんの目が本気だった。おーこわい。ごめんなさい、急に恋人()からそんな事言われたらイラつくよね。恋人()だから許してください。


「朝ごはんいただいてから、もう一眠りしてもいいですか?」

「やっぱり具合悪いんですね?すみません、無理させてしまって」

「いえいえ。風邪引いたのかもしれませんし…」

「このまま帰すわけには行きませんし、名前も独り暮らしで不便でしょう。このままもう一泊してください。病院にも連れて行きますから」

「すみません。お言葉に甘えます」


どうせ夢の中なら、高校に行かなくてもいいかな、なんて誰だって思うだろう。仮病ばんざい。でも蘭と本堂くんに会いたい気持ちもある。時間経過的に昨日ぶりとなるわけだが、ずいぶん会ってないように感じるから。本堂くんはアメリカではなく日本にいるだろうか。私の夢だからどうか都合のいい夢にしてください。安室さんの恋人()してるんだから、会うくらい叶えほしいと思ったけど、そんな肩書きのまま本堂くんに会ったなら罪悪感でつぶれてしまうからリセットしたい。ということで夢の中で眠ったら現実世界で目覚めるよね?というなんともチートな発想が浮かんだ。そうだそうしよう。

安室さん、病院に行く前にさっさと目覚めますね。おやすみなさい。
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -