嫌いを好きにする方法 | ナノ

噂の安室さん(前)

出会いは偶然でも必然でもないものだと思う。

コナンくんの秘密を共有するようになってから、毛利探偵事務所によくお邪魔するようになった。蘭と一緒に帰る私も、彼女が部活のときは私は先に探偵事務所に帰り、ポアロで一人優雅なティータイムを過ごしているのだ。


「いらっしゃいませー!あ、名前ちゃん!いらっしゃい」

「こんにちは、梓さん。今日も笑顔でお腹一杯っす!」

「またまた、口が上手いんだから〜!今日もいつものティーセット?」

「はい、お願いします」


頻繁に通う私と、ポアロのウエイトレスである梓さんが仲良くなるには、然程時間はかからなかった。いつも明るい笑顔で迎えてくれる梓さんは天使だ。毛利先生も癒されにくるのがよく理解できる。


「そう言えばね、新しいバイトさん入ったのよ!」

「へえ、また賑やかになりますね。マダムですか?ダンディ系のおじ様ですか」

「あっ、惜しいわ!ダンディというか爽やかな若い男性よ」

「あー、残念」

「名前ちゃんはおじ様好きよね〜」

「毛利先生なんて妃先生へのツンな具合と誠意ある愛のデレとのギャップがあって特に好きです」

「息継ぎなしの早口ですごいわ〜!」


ちょっとずれた会話が繰り広げられる。大丈夫、噛み合ってないのは百も承知のこと。梓さんとの会話は大体こんな感じである。しかし、ここで問題となるのはバイトさんの件。

ただ、私がポアロに入り浸る所謂お得意様だっただけ。ただ、ポアロで働き始めた人が増えただけ。その新しいバイトさんが、安室さんだった。


「榎本さん、遅くなってすみません。今から入ります」

「お疲れ様です!今日は空いてるから大丈夫ですよ」

「ありがとうございます」

「名前ちゃん、この人が新しいアルバイトの安室さん」

「こ…こんにちは」


私は元々アニメとか漫画はあまり読まない。どちらかといえば裏方が好きな、製作側を追うタイプの人間。ゆえに原作の『名探偵コナン』をあまり知らないけど、果たしてポアロにこんなバイトさんがいたものか。梓さんは「声優さんから名前をもらったキャラ」として、高木刑事と同じということで覚えていた。しかし、たしかこんな人覚えてない。…ああ、モブか。


「安室さん、この子はポアロのお得意様の苗字名前ちゃん!お二階さんの蘭ちゃんの同級生なんです」

「へえ…初めまして。僕は新人バイトの安室透といいます。毛利先生の助手も兼ねているんです」

「え?」


あれ?訂正。やっぱりなんか知ってる気がする。服部平次的な色黒に金髪、そして敬語キャラ。これは世で“バーボン”と騒がれていた人?だよね、うん、多分。って、私、意外に結構コナンに詳しくね?


「僕はよくコナン君や蘭さんから貴女の話を聞いています。事務所でも会うと思いますから、よろしくお願いしますね」

「初めまして…」

「ぷっ、名前ちゃん会話が噛み合ってないよ!」


それを梓さんから言われるなんて、私は相当なコミュ障なのかもしれない。
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -