03  




次の日にはあの男の怒りはそれなりに収まっていた。
ジョナサンと話したお蔭もあるだろう、彼は嫌なことがあったら話を聞いてくれるし
嬉しいことがあったらともに喜んでくれる。
ジョナサンは名前の精神安定剤となっているのだ。
さて、学校に行く用意ができたし早く行って今日の授業の予習をしよう
名前は普段は口が悪く、すぐにキレてしまうがとても真面目だ。
いつも30分前には学校についていて授業の予習をしている。
それは名前が特待生だからだ、いつも首席をとらなくちゃあいけない。
バイトをしているのも学費と生活費を稼ぐためだ、早く新しいバイトを探さなくてはいけない。登校しながら求人のチラシを開き、今度はどこでバイトしようかと考える。


「ジョジョだわ!」
「ジョジョ!!」

ジョジョ。この女性の集団に中心にいるジョジョというニックネームの男、確か本名は「空条承太郎」。彼はいわゆる不良で喧嘩はするわ教師と揉めるわで名前にとってはあまり関わりたくのない人間だった。
名前も素行はいいとは言えないほうで、怒りが湧いたら所構わず殴ってしまうような性格だ。まだそのボロを学校では出していないもののこんな不良とお近づきになればなにか不味いことになるのは歴然だ。
いつも全く接点のない奴だが今日は珍しく名前の登校時間と彼の登校時間が被ってしまったらしい。

しかしながら不良というのは大体は嫌われ者だが彼は違う。
男子からは信頼され、大層な男前らしく女子から絶大な人気を誇る
名前とは同じ学年だが、彼をこれでもかというほそに避けていたせいで顔すらまともに見たことはない。
だがあれだけモテるのだから顔を拝見してもいいかもしれない、と名前は思った。
まぁジョジョというニックネームがジョナサンにも当てはまるからという理由が大半だ、顔もジョナサンに似ていたりして。と三年間で初めて、そんなこと思ってしまったのだ。

すこし早歩きしてあの集団の前までスタスタ歩き、
控えめに振り向けばジョジョの顔が拝める。
キリリとした眉に長いまつ毛。目立つ青緑の瞳。
2mはありそうな身長に身に着けている個性的な学ラン、帽子を深くかぶり女子をうっとおしそうにしている彼には見覚えがある。

「あ…!あの時の食い逃げじゃあないかッ!」

ぐるりと身を承太郎へ向け盛大に指を指して叫んでしまった名前。
ジョジョは微かに目を開き驚いている素振りを見せるが、ジョジョがなにかアクションを起こすより先に周りの女子が反応してしまった。

「あなた何!?」
「ジョジョのことを食い逃げ扱いするなんて失礼だわッ!」
「違うわよ、この子あれでしょ?何か因縁をつけてジョジョに近づこうとしてるのよ」

女子の純粋な悪意が名前に突き刺さる。
ただ、「女性には優しく」とジョナサンがいつも名前にきかせていた為。
名前は親のいいつけを守る子供のように頑として女性には手をあげないし極力言葉遣いもやわらかだ。それにここで喧嘩なんか起こした日には学費免除がおさらばじゃあないか
ぐぬぬと何も言い返せずいるとスタスタとあの集団は名前の前を通り抜けていく。
全く、世の女が全てエリナのような淑女だって?お笑いだなとこの間のジョナサンとの会話を思い出す。
はぁ、とため息をつきながらジョジョの跡をつけるように学校へ向かう。
嫌だったがしょうがないじゃあないか、同じ方向なんだ。
名前は怒りよりも、どんよりとした気持ちで学校まで行く羽目となった。

学校へいくためにはクソ長い石段を通らなければいけない
カツカツと承太郎が石段をを下るのに続いて名前も石段を降りようとするが、
目の前にいた承太郎が、なんといきなり吹っ飛んでいた。足からは血が出ていてそのせいで思い切り石段を踏み外すことになってしまったのだろう。
これは石段の下に落ちてしまうんじゃあないかと、名前は石段を前にいた騒ぐ女子の前を駆け下りていき受け止めようと必死になるが、
承太郎から手がもう一本生えてきて木の枝を掴み無事に着地した。

(なんだあの腕…!)

あれはあの時見た霊じゃあないのか、見間違いじゃなかったのか。
驚きはするもののジョジョを受け止めようと出した両腕が滑稽に出ているままなのに気がつき、恥ずかしくなり急いで両腕をしまう。
その時、承太郎はというと石段の下の茂みにいるらしく、
見てみると足がバックリと切れていて痛々しい。
治療をしてやろうと名前は承太郎の足に手を添えようとするがすぐその手を引っ込めてしまう。

(また女子に文句をつけられ教師に告げ口なんかされたらたまったもんじゃあないぞ、
この怪我だって私のせいにされかねない。)

怪我人を放っておくのは些か罪悪感があるが、面倒事になるよりはマシだ。
慌てて名前はクルリとそっぽを向き急いで学校へ向かった。


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