「やっぱりエジプトか…
いつ出発する?僕も同行する。」
声のする方向へバッと顔を向けると声の主は花京院。
彼もどうやらジョースターご一行と行動を共にしたいらしい。
だけども承太郎は怪訝な顔するばかり。
「同行するだと?なぜお前が?」
その疑問は至って普通の言葉だったことだった。
承太郎とこの花京院は知り合ったばかりで、ホリィとも親しくはない。
ただその言葉に花京院は「よくわからない」と先日の承太郎の言葉のお返しとでも言うように放った。
「…ケッ」
「君のおかげで目が覚めた。ただそれだけさ」
承太郎は悪態をついているが、
確かにこの二人の間に友情が湧いたのが目に見えた。
彼はきっと善意だけなのだ、
ただ尽くしたいという思いでこの旅に同行するつもりなのだ。
場の空気が和んだところで、次に口を開けたのはジョセフだった。
「名前。これを頼むのは物凄く心辛いんじゃが…
…。この旅に同行してもらえないだろうか。
もちろん、強制じゃあない。」
「おいッ!一般人にそんなこと頼むもんじゃあないぜ!」
承太郎がおじいさんであるジョセフに向かい怒鳴るがジョセフの意思は変わっていない。
静まる広い部屋。きっと自分が答えを出さなければこの張りつめた空気は変わらない
名前の目標はバイト代を溜めながら高校を出て、いい大学に行き
いい就職をし、裕福な生活をおくることだ。
けれどそれ以上に…
「私は聖子さんを助けたい。
それにワケあってDIOに会わなければいけない…
…。私は、君らに協力することを誓う。」
自分の意思を伝えると。ジョセフはホッと息をついた。
「花京院…。それに名前が居れば心強い。これからよろしく頼む」
出発はSPW財団が到着した後、それまでジョセフたちはホリィの看護にあたり
アヴドゥルは明日の為の準備をする。
「ジョセフ。私は家に帰って旅の準備をするよ
用意ができ次第すぐ戻ってくる」
「そうじゃな。わしも君のご両親に承諾を得ねばならないからな…」
聖子のために果物をきってやろうとキッチンにいるジョセフを呼び止め
準備のため少しばかり空条家から出ることを伝えるとジョセフが一緒に行くというがそれは必要のないことだった。
「私に両親はもういない、だからその必要はない。
それより50日の間、聖子さんと会えないんだ、もう少し一緒にいるといい」
ジョセフはこのまだ青春を謳歌してもいいはずの女子高生の元に両親がいないことに、そして彼女が年に相応しくない発言と様子に心を痛める。
きっとこの子は茨の道を歩んできたのだろうことを察するには容易だった。
「そうか…。それはすまないことを言ったな」
「いや、いいんだ。じゃあ行ってくるよ」
玄関で靴をトントンと履いていると承太郎が玄関へやってきた
承太郎もどこかへ行く気なのか靴を履き始める。
聖子さんの為になにか買っていくんだろうか、と気にはなったが
特に親しくもない。いやむしろ気に食わない人間の部類に入る承太郎にこちらからアクションはかけず無言で空条家をでていく。
急がなくてはと小走りで歩く名前のあとについてくる承太郎。
最初は目的地が同じ道のりなのかもしれないと思ったが、
ただの住宅街にはいるころ、承太郎が自分の後をついてきていると気づく。
「おい、なんでついてくるんだ。」
ジトリと歩きながら承太郎に睨みをきかせるも承太郎は特に反応しない。
女のガン飛ばしなんか、猫に睨まれたようなのかもしれない
なんでこいつはこんな不愛想なのかね、もっとジョナサンやジョセフみたいに表情をつけろよな、と心の中で悪態をつく。
「なんでついてくるんだ。同じことを二回も言わせるなよな」
「テメェの両親に挨拶しにいくんだろうが。」
廊下にいた承太郎にはキッチンの声が聞こえていたはずなのにこんなことを言うのは嫌がらせなのだろうか。
「…だから両親はいねーって。」
「いるだろ。」
「は?」
最初、意味は分からなかった。
何となく気になって家に着くまでのずっとその言葉の真意を考えてみた
考えた先はジョナサンの言葉だった
『死んでもね、未練がある限りずっと魂はこの世に定着してしまうんだ。』
前にこんなことを言っていた。
「…じゃあ父様と母様はまだ…いるっていうのかよ。」
「子供を残して心配じゃねぇ親はいねぇぜ。」
承太郎は照れ臭いのか帽子を深くかぶる。
さっきの言葉は嫌がらせじゃなく、自分を元気づけようとして
そして私の両親へ誠意を見せようとしたのだろうか。
「…じゃあ聖子さんもお前みたいな不良残したらさぞかし心配だろうから
私も…精一杯、全力を尽くす。」
「あぁ、よろしくたのむぜ。」
お互い照れ臭くなったのかそっぽを向いて歩き出す。
私が思ったよりも承太郎は嫌な不良金持ち野郎ではなかったのかもしれない。
「だがお前の食い逃げのせいでバイトクビになったことは許さないぞ」
「あれは客に暴行したからだろ」
「そもそもお前が食い逃げしなければ「料金以下のマズイ飯を出すのが悪いぜ」
「「……。」」
まだまだ名前と承太郎が仲良くなる日は遠そうだ。
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