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「やばい…ッ」

ドタドタと無駄に広い和風の昔の日本の城みたいな家。
あぁそういえばこの家この間見た屋敷じゃあないか?
空条のヤツ、こんなに金持ちだというのに食い逃げなんかしたのか。
相変わらずむかっ腹のたつ奴だと名前は鼻をフンっと鳴らす。

「えーっと確かこっちがキッチンだから玄関はあっちか。」
ヴィジョンでの記憶を探るとぼんやりとこの家の間取りが頭に浮かぶ。
そうだ、もしかして今この瞬間にも聖子さんは高熱で苦しんでいるかもしれないのだ
無事であってくれ。そう思いながらキッチンへ足を運ぶ。
すると、なんと床には聖子さんが苦しそうに倒れていた

「せ、聖子さんッ!」
急いでその場に倒れているホリィを抱きかかえると彼女はすごい高熱だった。
ハァハァと不規則で荒い呼吸をしながら苦しんでいる、
風邪かなにか、そう思いたかったが。だがそれは違う
それは彼女の服の襟からはみ出た植物が物語っている。

「空条!!ジョセフーッ!!アヴドゥルーッ!!」
思い切り、喉がはち切れるじゃあないかってほど叫ぶ
すると先に駆けつけてきたのはアヴドゥルだった。
彼は目を見開き驚愕するが「失礼。」と
返事を待たずにホリィの服をめくり背中を確認する。
それはホリィに寄生でもしているかのような植物のスタンドだった。
茨を背にまとわりつかせ、所々にはベリーの実のようなものがついていた。

「非常にまずい…このままでは…」
「ど、どうなるっていうんだよ…。」
「『死ぬ』…。とり殺されてしまう!」
『死ぬ』それは名前にとってもショックな言葉だった。
長年ジョナサンと見ていたヴィジョンはホリィ、もとい聖子さんが生まれるまでの時間を見ていた。名前はジョースター家に家族愛のようなものを感じていた。
勿論相手からしたらそれはおかしな話なのだろう、
だがジョージのことを、エリザベスのことを見て涙した日もある
ジョセフの話を見て、心がドキドキと緊張感を覚えたり、クスリと笑わせられたり
ホリィのことだって生まれた時はまた新しい家族が出来たと喜んだ。

「どうしたら…」
苦しむホリィを抱えていると、名前の後ろに二人の人の気配を感じる。
それは紛れもなく承太郎とジョセフ。二人はワナワナと震え、その震えは怒りなのか。悲しみなのか名前にはわからない。

「言え、対策を。」
「…ひとつ。
DIOを見つけ出すことだ!DIOを殺してこの呪縛を解くのだ!それしかない!!」
DIOを殺す…。
当たり前だ、DIOはジョナサンを殺し。間接的にジョージまで殺し
さらには聖子さんを苦しめている原因なのだから。
そんな当たり前のことだが名前の心がチクリと痛んだ

「しかしわしの念写ではやつの居所はわからん…ッ!
…ハッ、そういえば君ッ!確かDIOはエジプトのアスワンにいると言っていたな!?
それは確かな情報なのか!?」
「確かに私はエジプトのアスワンにいるのを
“見た”。だが確証があるとは言えない…」
アヴドゥルは全く信じられないという眼で名前を見つめる。
彼はただただ信じられないだけかもしれないが
名前にとってその眼は責められているように感じて、息が苦しかった。

「おじいちゃん。DIOの念写を貸しな。」
沈黙を破ったのは承太郎だった。
彼は念写を乱暴に受け取り、何やらスタンドでスケッチをしだした
スケッチされたものは蝿。どうやら念写の中に映り込んでいたらしい。
図鑑で調べてみるとそれはエジプトのアスワン付近にいるということが確認できた。

「…どうやら君の力は本物みたいじゃな…。」
自分でも半信半疑だった私が映っていない未来のヴィジョン。
これで確認できたのはDIOの居場所だけではなく、私の夢が確実に現実になるということだ。これは救いだが、それと共にあの恐ろしい未来のヴィジョンが現実になるというのが、名前にとっては恐怖でしかない。


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