06  




『わっ。いきなり来たね…、どうしたんだい?気絶でもしたかい』
「…そうみたいだね。」
あはは、とジョナサンは冗談半分で言うがそれは紛うことなき事実で
名前も苦笑いするしかできない。

「ジョジョ。昨日のヴィジョン、本当に未来のことだった」
『だから言っただろう?僕は君に嘘はつかないよ』
ジョナサンにとっては軽く名前を責めたつもりだったのだろう「なのに君は僕のことを信じないんだから…」とでも言いたげな目をしている。
名前はジョナサンが自分に嘘はつかない、という言葉に気分がよくなるが
やはりこのジトリと睨む視線に耐えきれなくなり
目の前にスッと現れた高級そうなテーブルに綺麗なティーカップが現れる
ティーカップの底からは温泉のように紅茶が湧きだし、辺りをいい香りが包む。
名前はジョナサンの視線から逃れるようにそのティーカップに口をつけた。
この夢の中は名前が望むものが手に入る世界だ。
紅茶が飲みたいと思えば目の前に洒落たティーカップと共に紅茶が出てくる、
クッキーが食べたいと思えばサクサクとした歯ごたえのするバターたっぷりのクッキーが現れる、しかも少し暖かい。焼きたてだ
こんな不思議なことも全て少しリアルな「夢」と考えれば疑問も持たなかった。

ズザザ―
少し耳障りな砂嵐、これはヴィジョンが切り替わる合図だ。
名前の過去のヴィジョンから切り替わったのはどうやら未来のヴィジョンらしい、
相変わらず私自身の姿は無いが、女の人が倒れている。
風邪でも引いたのかゼェゼェと息を荒げてとても苦しそうだ
背中には植物が生えている、背中を触ってそれが透けている。幽霊とかそういう類のものなのだろうか。

「これも未来のヴィジョンか…」
『そういうことになるね…。』
だがそこでまた砂嵐。
今度はジョナサンの物語だった、
未来のヴィジョンは“一度きり”しか見ないが、こういったジョナサンたちの物語や私自身の過去のヴィジョンは何度も見る。そろそろ飽きたとあくびを盛大にかますと
ジョナサンが少し言いにくそうに口を開いた。

『できれば…できればだけど…』
思ったことをすぐ口に出してしまうジョナサンにしては珍しく口を濁していた。
名前 はジョナサンの頼みならできることなら叶えてあげたかった。
もっとも、ここは夢の世界で。そんなことはちゃんちゃら可笑しいのかもしれないが。

「なんだい?もったいぶらずに言ってみろよ
内容によっては報酬次第で叶えてやるぜ。」
内心では何でも叶えてやる、といって意気込みだが
素直じゃない名前は口ではこんなことを言ってしまう。

『…ディオに。…DIOに会ってやってほしい
もちろんそれは君の命に関わることだから無理にとは言わない、
このまま平穏な生活がいいに決まってる』
「ディオって…ジョナサンを殺した悪党のことかい?
今はエジプトの…確かアスワンにいるヴィジョンを見たことがあるなぁ」
そういえば前に棺桶のようなものからDIOが這い出てきて、エジプトのアスワンに向かっていったヴィジョンを見た。
でもDIOは物語の中の人物のはず。あれは物語中の出来事のだずだ

『そう、DIOに会って…。そして承太郎たちを救って。
君は彼らを救う術を知っている』
「空条承太郎はまだしもディオは夢の中の登場人物だろ?
それに会うって…面白いジョークだ」
そういうとジョナサンが少し悲しそうにしたのに心が痛んだ。
しかし、聞いた時こそ信じなかったものの…
花京院は確かDIOに忠誠を誓ったとかいってなかったか?
もしかして…いや、DIO違いだ。
私の夢の人物が現実にいるなんて…そんなファンタジーあるわけないさ。

『おや、…まだ話したりないけど、もうすぐ目が覚める頃だね。またね』
「…あぁ、また」
ジョナサンが悲しそうな顔をしながら手を振る。
ジョナサンは私に嘘はつかない、でもその話を丸々信じるには名前の心のキャパオーバーというやつだ。
DIOが現実で存在しているとなるとジョナサンや、エリナ、スピードワゴンにジョセフやシーザーたちも存在するということだ。

あぁ、なんだかまた頭が痛くなってきた。
考えるのは起きてからにしようとうっすらと目を開けた。
横には花京院が寝ていてそれとは逆の隣にはやたら体格のよいおじいさんと不思議な恰好の黒人がいる。襖の近くには承太郎が立っていた。

「おい、この女の子目を覚ましたぞ。」
「あんなに重症だったのに…奇跡ですね…。」

おじいさんと黒人はそろって驚いていた。
目を覚ましたはいいがおじいさんたちの言う通りかなり重症だ。
早く治療せねばと、名前は波紋の呼吸をする。
すればみるみる傷は塞がり、健康な状態へと戻った。
その様子をみて、おじいさんは眉をピクリと動かした

「花京院のやつ…派手にやってくれたな…。
と、いうか。これはどういう状態だ?」
「…いま、この花京院を目覚めさせて話を聞こうというところだ。」

承太郎は名前の異常な回復力に驚きつつも言葉にはしないで、帽子を深くかぶった、
しかし、回復はしたもののまだ頭が痛い…。
状況説明を求めたところ、
ディオの話を聞くために殺さずにここへ連れてきたらしい。

「そのことじゃが…それはもう手遅れじゃ。あと数日のうちに死ぬ」
「……。」
「承太郎、お前のせいではない。
みろ、この男がなぜDIOに忠誠を誓ったのか。」

「その理由はここにある」と、おじいさんが花京院の前髪をかきあげると
花京院の額には気味の悪い肉の塊のようなものがついていた。
説明を聞いてみるとこれはDIOの細胞からなる肉の芽、
この肉の芽を植え付けられたらカリスマを植え付けられ忠誠を誓ってしまったらしい。
手術はできない、脳に傷をつけてしまうからだ。

「ジョジョ。こんなことがあった…
4か月前、私はエジプトのカイロで…。
DIOに出会った!!」
(またDIO…さっきからこいつらが言っているDIOは本当にあのディオなのか?)

もしそうだとすれば…自分はは会うべきなのだろうか…何故?
会うべきな気がする。ジョナサンに言われたからじゃあない、
何故だかそういう運命のようなものがあるのだ。
名前は悶々として考えていると黒人の話は終わっていた。
それどころかスタンドで承太郎が肉の芽を引っこ抜いていた飛んで行った肉の芽、うねうねと気持ち悪るいそれをおじいさんは『波紋疾走』と叫んで殴ると、肉の芽は砂粒と化した。
それは名前も使える波紋の技、それを使いこなすこのおじいさん。見たことがある
いやー…、なんだっけなぁ。喉まで来てるんだが…


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