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【 1 】

−−−−−とある家、木の葉にて。

「ナマエー!おはよう!」
「なんでいるの」
「なんでって君を迎えに来たに決まってるじゃない!早くアカデミーに行こう」
「えぇ……まだ眠いよ」
「えーじゃないの! ほら!早く!」

数年前に一度死んだはずの私は、なぜか人生を一からやり直すことになった。これが所謂転生というやつなのだろうかと考えてみたけれど、実際に転生したことがある人もいなければ文献なども存在しないためわからずじまいだ。

こちらの世界に来て何年になるだろう。
ミナトはアカデミーに入った頃から毎日私を迎えにきてはまるで母親のように準備を急かす。懐かしいような、さみしいような。

「ねえ、ミナト」

数年アカデミーに通って気になっていることがあった。そろそろ一度確かめておきたい。…確かめなければならない。

「ん?なに?」
「クシナって知ってる?」
「だれ?アカデミーにいる子なの?」
「……知らないならいいの」
「そう」

少しずつ、少しずつ、違和感が現実に…そして確信に変わっていく。それから待てど暮らせどクシナがアカデミーに転校してくることはなかった。

−この世界にクシナは居ない−

きっとこの年齢の時には彼女はすでにアカデミーに転校してきていたはずなのだ。

私は…クシナのことが嫌いなわけではない。むしろ大好きだった。大好きだったからこそ、ミナトの隣を諦め、彼らの温かい家庭を望んだ。しかし、この世界にクシナは居ない。

私がミナトの隣を望んだせい?
どうしてだろう、すごく心が重い。

.
.
.

「よし!ナマエ!一緒に帰ろう」
「私ひとりで帰れるよ?」
「俺が一緒に帰りたいの!」
「うーん」

ミナトはこんなにストレートにものを言う子だっただろうか。

根負けして仕方なく一緒に帰っているとお惣菜屋さんのおばちゃんに声をかけられた。相変わらず仲がいいのね〜、なんて。

小さい頃からミナトのことが好きだった私にとっては嬉しいことなのだろうが、なぜか釈然としない。きっとクシナがいないから、私は今ミナトの隣にいることが出来ているだけに過ぎないのだ。

「ナマエ!今日の夜ご飯はなに?」
「なにがいいの?」
「オムライス!」
「好きだね、それ」

もともと既に両親は他界しお互いにひとりで住んでいた為、一緒にご飯を食べることはよくあった。まあ今の私は中身は大人だから…自分と同じ年頃の子供と比べれば料理は得意な方なのだろう。

ナマエのオムライスは美味しいんだ!と、嬉しそうに笑うミナトに胸が痛む。こんなに聡明で強くて誰よりも里を愛するミナトの死は、あまりにも唐突にやってくる。若すぎる死に、私はまた涙を流さなければならないのか。昔より近くなったようで、遠くなる二人の距離。ミナト、好きなのに一緒にいるのがつらいよ。