【 2-15 】

チャクラを練って、全てをミナトに注ぎ込む。普段忍術なんて必要としない生活をしてきたおかげで、チャクラを練るだけなのに相当な労力だ。額から汗が流れ落ちる。

…でも、少しずつ生気を取り戻すミナトを見ていると、不思議と穏やかな気持ちになれた。ありがとう、ありがとうミナト。私を愛してくれて本当にありがとう。

「お前…!その術をどこで!!」
「…ッ…砂の里に伝わる死者を生き返らせる禁術です」
「死者を生き返らせるだと!?そんなことができるわけないだろう!」
「術者の命と引き換えに、ということでそれなりの代償は必要ですが…はぁはぁ…」
「ナマエさん!それじゃあナマエさんの命が…!!」
「私の命と引き換えに火影が助かるんだったら安いものだよ、カカシくん。それにね…もう後悔したくないの。」
「でもそんなのミナト先生が望むわけない…!」
「ふふ、ありがとう。カカシくん、ミナトが起きたら伝えてくれる?」
「え?」

−−−ずっとずっと愛してるって

ああ、ミナト、最後にもう一度だけ会えたら良かったんだけど…なんて言ってられないか。 起きたらきっと忙しくなるよ、頑張れ、ミナト。

「ナマエさん!!ナマエさん!!!」
「ミナトの様子が変わったぞ!?」
「綱手様!ナマエさんを…!」
「ああ!わかっている!すぐにベッドを用意しろ!!!」


ああ…どうしてこんなにも騒がしいのだろう…ここは一体…なぜ…俺は…生きている?夢、なのだろうか…。ナマエに会いたい…。

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火の国から少し離れた所にある渦の国。渦の国には九尾の人柱力の青年がいた。しかしそんな人柱力をつけ狙い、尾獣を利用し、戦争を起こそうとするよからぬ輩がいると聞いた。そしてそんな輩の思惑通りに、人柱力の青年の封印が弱まっており、なんとか力添えをとの要請が出た。同盟国であり、初代様の奥様がお生まれになった渦の国。なんとしてもこの危機を回避しなければならない。それが上層部の決定である。

俺は木ノ葉の代表、火影として信頼できる仲間を集めて渦の国に向かった。渦の国にはうずまき一族と呼ばれる特別なチャクラを持った赤い髪の一族がいた。その中にクシナという女性がいた。どこがで聞いたことがある名前だ…そうか、ナマエが言っていた…。ナマエしか知らない世界で俺の妻となったという女性だった。ナマエよりも幾分大胆で豪快で、明朗快活な女性。…人柱力の青年の妻であった。

「お力添えを頂けること、心からお礼申し上げます」
「そんな、俺たちは出来ることをするまでです。」

渦の国に伝わる封印術というものを教わり、いざ封印の儀式の時となった。

…危険度Sランク以上の任務だ。そう簡単に全てが上手くいくわけ無かった。

封印の儀式に邪魔が入り、人柱力から尾獣が抜かれてしまったのだ。尾獣を抜かれた人柱力に待っているのは…死、のみだというのに。

九尾との争いは熾烈を極めたが、それでもクシナさんは気丈だった。
青年にもしものことがあれば、次はクシナさんが人柱力になることが、この国では決まっていたらしい。

「八卦封印」とクシナさんが叫び、俺も彼女と共に封印式を組んだ。強大すぎるチャクラに体がビリビリと痺れる。皮膚がめくれ、亀裂が入り全身が自分のものではないような感覚。それでも、この痛みに耐えているクシナさんがいる。俺の帰りを待っているナマエがいる。

もう少しで封印が完了するという時、最後の悪あがきをした九尾によって体が吹き飛ばされ、俺は意識を失った。

「なんとか封印は間に合ったが…四代目!!!」
「火影様!!!」
「早く里へ!!!」

人柱力の青年の死、新たな人柱力の誕生、瀕死の火影。大き過ぎる代償の元、九尾は封印されたのであった。