【 2-9 】
時計の針も天辺を通り過ぎた真夜中。ミナトが帰宅したのか、人の気配が感じられた。激化した戦争のおかげでミナトと過ごす時間も少なく里も不安定だ。数日ぶりに会うミナトだったが、なんだか気恥ずかしくて私は布団から抜け出せずにいた。しばらくの間シャワーの音が聞こえていたがそれも止み、やがて寝室の扉が開かれた。
「ナマエ?…寝ちゃったかな」
ミナトは壁を向いて寝たふりをしている私の背後に潜り込み、私を抱きしめた。少しだけ震えているミナトの両手。…泣いてる?
「…ミナト?」
「ん…起きてたんだね」
「泣いているの…?」
「勝手に出てきただけ…情けないね、俺は」
「何かあったの?」
私は体の向きを変え、涙を流すミナトの頭を抱きしめた。ミナトは遠慮なく私の胸に顔を埋めた。ミナトのキラキラと輝く髪を撫でながらミナトの言葉を待った。
「戦争は嫌いだ」
「うん」
「みんなで仲良しこよしなんて出来ないのは百も承知だよ。だから俺たち忍がいる。でもやっぱり…仲間が死んでいくのは辛いよ、ナマエ」
「ミナト…」
ミナトだって、苦しんでいたのだ。
私だけがミナトの死に苦しんでいたわけでは無い。
私の知らないところでミナトは仲間の死に心を痛めていた。それがかつての火影という立場なら尚更のことだろう。ミナトはこれから先火影として人の上に立つ。そして今以上に苦しむのだろう。
「オビトが死んだよ」
「!」
「あれだけ仲が悪かったのに、最期はカカシを守って犠牲になったらしい」
「オビトくんが…」
「まあ、本当は仲が良かったんだけどね、あの子達。オビトと俺には火影になるっていう夢があった。オビトには叶えて欲しかったなあ………」
「…そうだね」
「つらいよ…ナマエ…俺は大事な教え子さえも守れない」
このままではミナトが壊れてしまいそうな気がした。私は未だに涙を流すミナトの頬を両手で包み、唇を重ねた。一瞬驚いたミナトは目を見開いたがすぐに委ね、私たちの舌は幾度となく絡み合った。それから自然な流れで彼の手は私の寝間着の中に侵入し、初めて直に胸に触れた。ミナトの手は少し震えていた。
「ナマエ…止まらなくなるよ」
「いいよ、私もあなたと…」
「ナマエ…!」
彼との情事はこれが初めてだった。