【 2-8 】

あの事件から数日。いつものように仕事をしていると、自来也様がお店にやってきた。自来也様は久々に私の顔を見たかったと言ってくれた。ちょうど良かった…私も話したいことがあったのだ。

「もう少しで上がるので、待っていただけますか?ちょっと場所を変えてお話ししたいことがあるんです」
「ん?わしは構わん」
「では、」

それから仕事を終えて、自来也様と私の家に向かった。ミナトは任務で数日帰れないといっていたので丁度良いだろう。

「またミナトにドヤされるのォ」
「数日は帰らないそうなのでご安心を。自来也様、あの…突然ですがお聞きしたいことがありまして」

いつかのように二人分のお茶を準備して着座する。本当は知りたくない、でも知らなくてはならない。

「自来也様は人柱力ってご存知ですよね」
「…どうしてお前がそれを知る必要がある」
「九尾の人柱力について知りたいんです」
「理由は」
「自来也様のお答え次第で」

自来也様は私の真剣な声色に負けたのか、ポツリポツリと話してくれた。現在、九尾の人柱力は渦の国にいるということ。人柱力は渦の国の青年であるということ。彼らは特別なチャクラを持った血族であるということ。

私が生きていた時代では、渦の国はすでに消滅していたし、この頃の人柱力はクシナだったはずだ。それが名も知らぬ青年であるということは…やはり時の流れが違うということ。

「ナマエ、わしの知っていることは話したぞ。次はお主の番だ」
「信じるか信じないかは…自来也様次第ですが…ミナトの先生だからこそ、お話しします。」

それからミナトには告げていないことも自来也様に伝えた。私は転成者だということ。前の世界で彼が愛した人は人柱力であったこと、ミナトは火影になり里を襲った九尾を封印して人柱力であった妻と共に亡くなったということ。そして、そのあと…私も彼の後を追ったこと。

「まさか、そんなことが」
「彼は火影になる男なんです。里を守るために自分を犠牲にしてしまうような人なんです。でも私は…今度こそ、生きて里を守って欲しい。」
「…お主に初めてあったときの違和感が何となく解決したかのォ」
「解決?」
「お前さんの妙に大人びた思考、妙な流れのチャクラ、その他諸々気になっていたのでな。」
「流石自来也様…。あの、生きる時代は違ってもミナトの夢は昔と変わらず火影になることなんです。ミナトの夢への道を支えてあげてくれませんか…もう、死なせたくないんです」
「あぁ。勿論あいつの師匠として支えるつもりじゃ。しかしあいつが今一番頼りにしているのはお前さんだということを忘れるな。…今まで辛かったんじゃな…気付かなくてすまない」
「いえ、お気持ちだけで嬉しいです」

ミナトがいない間に、少しだけ肩の荷が下りた気がした。