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【 2-1 】

澄み渡るような青空がある。
元気に飛び回る鳥たちがいる。
いつになく長閑な里だ…。

そんなことを思いながらお団子を頬張る。
今日でミナトが里を出てから丸三年。

「ハアハア!!ナマエ!!」
「ん?チョウザったらそんなに走ったら痩せちゃうわよ?お団子食べる?」
「そうじゃなくて!ミナトが帰ってきたぞ!」

そっか…そろそろだとは思っていたけど、今日だったのか。

「恐らくお前の元に真っ先に来るとは思うが…」
「い、行って来る!!」
「いや、もう来ちゃった」

私が駆け出そうとした瞬間、正面から声が聞こえ、誰かとぶつかってしまった。すぐに離れて謝罪しようと思ったが抱き締められた為にそれも叶わなかった。

「やあ、ただいま」
「ミナト!!!」
「綺麗になったね、ナマエ」
「おか、えり…」

私を抱きとめたのは紛れもなくミナトだった。里を出た時より随分と背が伸びているし、精悍な顔つきになった。…ステキだ。

「ん?俺の顔になんかついてる?」
「え!いや、あの…」
「顔が赤いね。もしかして熱でもあるの!?」
「な!ないから!私今からチョウザとお団子食べるから離してくれない?」
「いや、俺はもう伝えたから帰るよ。じゃあなミナト、また後で」
「ああ、またね」
「ミナト!離して!」
「やだよ、久々なのに」

道の往来でなんてことをしてくれるんだこの人は…完全に注目の的だ。恥ずかしいったらありゃしない…!!

「そうだナマエ、新しい術が完成したんだ」
「え?」
「あらかじめ修行に出る前に君の家にセッティングしておいたんだ」
「何を!?」
「飛ぶよ」

ーーーーストン、

「ん!無事に成功だね」
「私の、家…?」
「あらためて、ただいま、ナマエ」

私を抱きかかえたまま、ミナトは嬉しそうに笑っていた。

それからミナトは何時間も何時間も楽しそうに修行での出来事を語ってくれた。私がお風呂の準備をしている時も、ご飯の準備をしているときも、ずっとずっとミナトの口が休まることはなかった。それくらい私達が離れていた時間は長くて、ミナトは大変な修行してきたということなのだろう。

その点私はいつもの生活を続けながらミナトを待っていただけ。なに一つ成長出来ていないような気がして、ミナトに置いていかれたような気がして、なんだかやるせない気分。

「ナマエ、聞いてる?」
「え?ああ…ごめんね、少し考え後してた」
「なにか悩みでも?」
「ミナトが遠くに行っちゃった気がして。私はなにも変わらないのに、ミナトはこんなに変わってる。」
「ん!そんなことないよ、君は綺麗になった。それに待っててって言ったのは俺だ。俺が君をそんな気にさせてしまったんだね…ごめん」

ああもう、私はなにを口走ってしまったのか。ミナトはなにも悪くないのに。

「俺、君が綺麗になっててすごく驚いたよ。見た目は変わったけど中身はいい意味で昔の君のままだ。だからじっと俺を待っててくれたんだろ?」

優しい目をしてミナトがそう言ってくれる。この人は本当に底抜けに優しい人だ。

「ありがとう、ミナト」
「ん!問題ないよ」
「もうこんな時間だね。そろそろ帰らなくていいの?泊まっていくの?」
「あー…そのことなんだけど」

ミナトは目を泳がせながら頬をかいた。
とても嫌な予感がする。

「実は修行に出る前に引き払ったんだ。前にも言ったけど…ナマエ、俺と一緒に暮らさない?というか俺には帰る場所がないから君とここに住む以外の選択肢はないんだけど」

にししと笑う彼。

やられた。ミナトは最初からそうするつもりだったのだ。