つ、疲れた……。就職したのがホワイト企業であることは間違いないのだが、今は所謂繁忙期というやつで、文字通り身を粉にして働いた。やっと一週間が終わり癒しを求めてポアロにやってきたのが数分前だ。
「いらっしゃい。随分疲れていますね」
「本当に疲れたから安室さんの顔が見たくてやってきました……」
「おや。それはそれは光栄なことですね。新作のケーキがあるんですけど食べますか?」
「食べます!」
「ははは。食べ物を前にするといつも通りだな」
安室さんはそう言って笑いながらホッとするような温かくて適度に甘い紅茶とケーキを出してくれた。頑張った名前さんにご褒美ですなんて言ってウインクまでしてくれて昇天しそうだった。
「僕はもう上がりなんですけど、それ食べ終わったら送りましょうか?」
「良いんですか……?実はクタクタで帰る気力無かったんです」
「良いですよ。他に何かご要望は?」
「明日休みだからどこかにドライブに連れて行って欲しいです」
「素直でよろしい。ではデートしましょう」
今現在ポアロの中にいるのはマスターと安室さんと私の他に常連客らしい男性が二人。女性の目がないからなのか安室さんは割と大胆な発言をしている。まあデートなんてのは冗談なのだろうけれど。
ご丁寧に助手席のドアを開けてくれた零くんにお礼を言って車に乗り込む。疲れすぎてボーッとしていると運転席に乗り込んだ零くんが私に覆いかぶさるようにシートベルトを締めてくれた。
「あ、ごめんなさい」
「随分疲れているな。大丈夫か?」
「繁忙期だったんで……。今日で終わったから土日はゆっくりしますよ。零くんは?明日もお仕事?」
「夕方からポアロ。それまでは空いてる」
「零くんも忙しいのにわがまま言ってごめんね」
「これくらいどうってことないよ。それに普段は俺の方がわがまま言ってるからな」
「ありがとう」
零くんは私の頭を撫でてその後に唇に軽くキスをすると車を発進させた。運転してる零くんカッコいいな。細くて長い指が少しセクシーだ。そんなことを思っていると視線だけを私に向けた零くんと目があった。
「どうした。そんなもの欲しそうな顔して」
「零くんカッコイイなと思って」
「なんだそれ」
「ハンドルを握る指も細くて長くてセクシーだし」
「セックスのときはこの指で名前を気持ち良くしてるんだが」
「うわ、やめてよセクハラだよ」
「先に始めたのは君だろう」
零くんの発言で否応なしに彼とのセックスが思い出される。彼は見た目に反して結構ガツガツと男らしいセックスをする。
「セックスのこと考えてる?」
「ばれた?」
「さっきよりずっともの欲しそうな顔してるからな」
零くんはそう言うと左手で私の太腿を撫で始めた。突然の刺激に体がびくりと反応する。そんな私の反応を楽しむかのように、彼の手はもっと大胆な動きをする。スーツのスカートをまくり上げ中に手を入れるとストッキングの上から割れ目を擦られた。
「んっ、ちょっと運転中でしょ…ッ」
「して欲しそうだったから、つい」
「やあ…っ…やめて、危ないよ」
「そう?じゃあやめようか」
本当はもっとして欲しいと思っているのをわかっているのにやめてしまう零くんは意地悪だ。自分だって勃たせてるクセに。
「零くん勃ってるよ」
「そうだなあ。どこかの誰かが入れさせてくれたら一番嬉しいんだけど」
「誰でもいいの?」
「そんなわけないだろう」
いつのまにか車は人気のない公園の駐車場に停められていた。
「ここの駐車場は監視カメラもないし、警察の見回りもこない。他に停まっている車もいないんだが……どうする?」
随分と大胆な挑発をされているなあ……。
そう思いながらシートベルトを外し、零くんの下半身に顔を埋める私は痴女か何かだろうか。
この車、セックスをするには少し狭い。
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