玉ーぎょくー

久しぶりの休暇を貰った。今、この世は乱世だ。いつ戦争が起きてもおかしくない状況が続いている。そんな状況だからこそ、名前の顔を見たくて家を訪ねてみたのはいいが…隣に座る名前の様子がなんか変だ。

「名前どうかしたのか」
「シカマル、これ、」
「あ?なんだこの箱」
「私からのプレゼント」
「ピアス?」
「アスマ先生から貰ったピアスを外してくれとは言わないけど、もし良かったらそのピアスもつけて欲しい」

モジモジしてた原因はこれか。俺に渡すタイミングを図ってたようだ。

「突然だな、何かあったのか?」
「父さんがもうすぐ戦争が起こるっていってた」
「…ああ。そうだな」
「私はいののように戦場でシカマルのそばにいられる訳じゃないでしょ…?それでも少しでも私を近くに感じて欲しくて」
「なんだよ、いのに嫉妬か?」
「茶化さないで聞いてよ、私はあなたが好き。だから生きて帰ってきて欲しい」

こんな真面目な名前は久々だ。いつもバカの一つ覚えみたいにヘラヘラ笑ってる奴なのに、なんでそんなに泣きそうなんだよ…

「何があっても帰ってくるって約束して」
「…なあ、名前。お前がガキの頃俺に髪紐くれたの覚えてるか?」
「うん」
「俺結構大事にしてんだぜ?お前が近くにいるみたいで心強ぇからな」
「ほんと?」
「だからこのピアスも有難く受け取る」

いのやサクラに見つかるとめんどくせーこと言われるのは間違いねーけど。まあ、いつまでもこいつを不安にさせておくわけにもいかねーし、たまには気持ち伝えてみるか。


「オレはよ、テキトーに忍者やってテキトーに稼いで…美人でもブスでもない普通の女と結婚して子供は2人 最初が女の子で次が男の子…長女が結婚して息子が一人前になったら忍者を引退して…あとは日がな一日将棋や碁を打って悠々自適な隠居生活…そして奥さんより先に逝く…そんな人生歩むのが夢だ」
「うん」
「お前はどちらかというと美人な方だし最初に思い描いた平凡とは少し違ェけど」
「うん」
「ま、俺の夢にはお前が必要なわけよ。ちゃんと愛してんぜ、名前」

名前のアゴを持って一つキスを落とすと、ポカーンとした顔になった名前。…慣れないことはするもんじゃねーな。

「シカマル、実は、夢の第二段階が近々叶うかもしれない」
「え?」
「まだ性別はわからないけど…」

そういって照れ臭そうに腹に手を当てた名前に俺は柄もなく激しく動揺していた。チッ…急過ぎて頭がついていかねーけど…嬉しいことには変わりねーか。そうか、火の意志を継ぐ玉がここにも。がんばらねーとな、俺も。


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