今日はハロウィンであるため、いつどこで誰にトリックオアトリートと叫ばれてもイタズラを回避できるようにと、私はたくさんのキャンディを装備し、市中見回りにいく。今日は土方さんが相方だ。
歩いているともう本当に狙ってるのかと問いたくなるくらい知り合いに出くわし続ける。神楽ちゃんと新八くん、さっちゃん、ツッキーのところの晴太くん、そして非番の隊士たち。みんな揃いも揃ってトリックオアトリートと浮かれて叫ぶので私は仕方なくキャンディを配り続けるのだった。
街を一周し、そろそろ帰ろうかとしているところに一番厄介な人が現れた。
「よおよお名前ちゃーん。こんな所で会うなんて奇遇じゃん??今日なんの日か知ってる?ハロウィンだよー」
「銀さんこんにちは」
隣にいる土方さんは明らかに機嫌が悪くなっている様子だ。早々に切り上げたい。
「名前ちゃん、トリックオアトリート。お菓子なくていいからイタズラさせてくんね?」
「残念でした。はいキャンディ!」
「ちっ!なんだよ」
「万事屋てめェ、さっきから人の嫁にちょっかい出してんじゃねェよ!しょっぴくぞゴルァ!」
「ちょっかいじゃねェ!本気だ!」
「余計タチ悪いっつーの!しね!」
いつものことながらこの二人本当に仲が悪い。似た者同士なのにどうしてだろう。
「ったくあの天パ油断も隙もありゃしねェ」
「なんだかんだ言いながら銀さんと喧嘩してるときの土方さんたのしそうですよ」
「楽しいわけあるか」
「あ!」
「どうした?」
「キャンディなくなっちゃった。銀さんにあげたのが最後だったみたい」
「トリックオアトリート」
「え?」
「菓子ねェんだろ?屯所帰ったらたっぷりイタズラしてやんよ」
ハロウィンごときで浮かれてんじゃねェと悪態をついていた土方さんの目が輝いた瞬間だった。
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