ううう、寒い…少しだけ開いた窓を恨めしく思いながら体を起こした。久しぶりに激しく抱かれたおかげで体のあちこちが痛い。それでもあの窓を閉めなければ、情事を終え、気持ち良さそうに眠っている彼が風邪を引いてしまうだろう。
布団の横に投げ出された下着と、寝間着の浴衣を手繰り寄せ軽く羽織ると私は布団を出た。今夜は随分と月明かりが眩しい。
窓辺に立って後ろで眠る銀時を振り返ると、とても気持ち良さそうな寝顔。そんな銀時の顔を見て私の顔が綻ぶのがわかった。私とのセックスが彼の心を満たす材料になっているのなら嬉しい。
窓を閉めて布団に戻ると月明かりでうっすら浮かび上がる銀時の傷に気がついた。布団を軽くめくると銀時が身震いをして顔を顰めたが、そんな顔ですら愛しいのだから私も随分と彼にほだされたものだなあと思う。肌寒さに背中を丸める銀時。彼の背中にはいくつもの傷があった。背中だけでなく、腕にも、腹にも、いくつもの傷があった。それは銀時が色んなものを守ってきた証拠でもあるが、同時に彼の心が傷つけられた証拠でもあった。銀時の傷を指でなぞっていると、彼が益々顔を顰めた。すこし擽ったかっただろうか。
「…なによ、名前ちゃん」
「起きちゃった?」
「いんや、起きてたんだけど…いつチューしてくれんのかなと思って待ってたけどしてくれそうにねェからよォ」
「ふふ、ごめんね」
「人のカラダ見て何してんの?名前ちゃんってばやーらし」
「たくさん刀傷があるなあと思って」
「俺と違ってお前ェさんは綺麗なカラダしてんな」
「この傷は私を守ってくれたときについた傷だよね、痛かった?」
「そりゃ痛ェさ。でもこんな傷でお前のこと守れたんなら安いもんだ」
「・・・ありがとう」
「惚れた?」
「ずっと惚れてるよ、大好きだもん」
「ああー今のキた。もうだめ」
銀時はそういって笑うと私を抱き寄せて、せっかく羽織った浴衣をもう一度脱がせるのだった。
「あんまり可愛いのと言わないでちょーだいよ」
「ほんとのことだもん」
銀時が嬉しそうに笑うから、私もつられて笑った。月明かりに照らされる彼はなんとも美しかった。私は傷だらけの背中ごと彼を愛したい。
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