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「おい、ナマエ、ついたぞ」
「えー…まだ眠いよお母さん…」
「誰がお前の母ちゃんだ!早くしろ」

頬をペチペチと叩かれて目を開くと、どアップで瞳孔の開いた副長の顔が。ギョッとして睡魔はどこか遠くへ飛んで行ってしまった様だ。ここは…、あ、車の中で寝ちゃってたんだ…しまった。

「すみません、肩をお借りしていた様で」
「ヨダレ垂れてなかったから許す」
「私だって大の大人ですからね」
「その割にはもう食べられない〜とか寝言言ってたけどな」

副長はカラカラと笑いながら車から降りる私に手を貸してくれた。偏食(変食)がなければ絶対いい男なのに…本当に勿体無い。

−ズドーン!!!−

屯所の門をくぐると、なぜか爆撃に遭った。前方からはバズーカを抱えた沖田くんがニヤニヤしながら近づいてくる。

「いや〜、二人が恋仲だったなんて知りやせんでした。結婚おめでとうございやす」
「総悟…てめェ…」
「モテる男はツライですねィ。ナマエさんも巻き込まれちまって可哀想でさァ」
「何が言いてェんだよてめェは!」
「クク…二人の仲が偽装だとわかったらあちらさんどうするのかなァって思っただけでさァ」

黒い…!黒いよ沖田くん!ビックリする程黒い笑みを浮かべる沖田くんに顔が引きつる。やだ怖い沖田くん。

「おおおお沖田くん?あまり大人をからかうもんじゃないわよ!ね?」
「二人でなんかコソコソしてると思ったらこんな楽しそうなことしてやがったなんてなァ」

沖田くんの物言いはまるで仲間外れにされた子どもの様。そっか、大好きなお兄ちゃんを私に取られてしまった様な感覚なのか。

「いくら偽装でも土方さんと結婚するなんてナマエさんどうかしてやすぜィ。あんたの実家に行くときは俺を旦那として紹介しなせェ」
「え、そっち?なんで?」
「土方さんの嫁役はあんたしか居なくても、あんたの旦那役はいっぱいいるだろィ」
「気持ちは有難いけど交換条件だから!ね?」
「今日の夕飯唐揚げにしてくれたら許す」
「え、お昼唐揚げじゃなかった?」
「昼寝してて食べ損ねたんでさァ」
「ってめ!またサボってやがったな!」
「いっけね、口が滑った」
「待て総悟!この野郎!!」

楽しそうに逃げ回る沖田くんと、必死な形相の副長。仲が良いのか悪いのか…。空を見上げれば夕陽が傾いていた。さてさて…わがままな坊ちゃんのために唐揚げの仕込みをしなければ。

二食連続の唐揚げにブーイングが起こる食堂で、私はせっせと明日の仕込みをしていた。夕食が唐揚げになったのは私のせいではない。

「沖田くーん、唐揚げ美味しい?」
「絶品でさァ姐さん」
「そんな呼び方やめてったら…」

ニヤニヤ笑いながら唐揚げを頬張る姿はまだまだ幼い十代の少年だ。こんな子が一番隊の隊長として働いてるんだから恐ろしい組織だわ全く。

「って副長!またそんなにマヨネーズかけて!」
「お前知らねェのか?唐揚げに一番合うトッピングはマヨネーズって結果出てんだよ」
「あれでしょ?投票権が副長にしかない副長が作った副長のためのランキングでしょ?そんなに過剰摂取したら高コレステロールが原因で死にますよ」
「どうせこんな仕事してんだ、長生きはしねェよ」
「またそんなこと言って、他の隊士の士気が下がるでしょう」
「はいはい相変わらず口うるせェな。毎日これくらいのカロリーを欲するくらい疲れてんだ。少しは労われ」
「私だって頑張って作ってるんですから料理の味を確かめてほしいんです!最初からマヨネーズかけなくてもいいじゃないですか」

そこまで言ったところで我に帰り辺りを見渡すと、また視線が集中していた。しかしいつもと様子が違う。何故か至る所からマジだったんだな、あれ…というフレーズが聞こえる。

「流石新婚ともなれば口喧嘩もいつもと違いやすねィ。これじゃ手料理を褒めてもらいたい新妻にしか見えやせんぜ?姐さん」
「は!?っていうか新妻!?」
「もうあんたらの関係は屯所中に知れ渡ってやすぜィ。あ、因みにバラしたのは俺でさァ」
「てめェ総悟!また余計なマネを!」
「敵を欺くには味方からでさァ。あとなんか気にくわないから苦労しろ土方コノヤロー」

パートのおばちゃん達に頑張りなよ〜と背中を叩かれたのは沖田くんのせいだったのか…。ヤバイな、これ。いつか嘘でしたと言わなきゃいけない日が来るのにどうしてくれるんだよ…。恨めしい視線を沖田くんへ向けるが、彼は何食わぬ顔で唐揚げを頬張っていた。

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