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ナマエが万事屋に手紙を預けていたことから、何かしら知っていたと思われるあいつに話を聞くために俺は万事屋へと足を運んでいた。ナマエが手紙を預けた経緯と、そこからのナマエの行動をできる限り正確に把握するためだ。

「ナマエの行動は全てナマエの意思によるもんだ。だからお前を責めるつもりはねェ…しかし無関係だとも思ってねェんだ。協力してくれ」
「俺としても予想外だよこんなこと。あいつは事件フラグ建築士かなんかなの?」
「…間違いねェな」
「ま、俺はあいつの数少ねェダチだから協力はしてやんよ。報酬は弾めよ?」
「また集る気か。その辺の交渉はナマエが無事に帰ってきてからだ」

警察組織全体としてみれば、あの高杉との繋がりがあるナマエなんてのは地雷でしかないはずだ。上から叱られることはあっても協力なんてしてくれるはずがねェのは分かりきった話だ。だから俺たちは俺たちにしかない伝手を使って全力でナマエを探すしかねェ。

真選組監察方、万事屋、見回り部隊による調査、色んなやつらの証言と攘夷浪士グループの中継の映像を解析してなんとか居場所を割り出すことができたのは、ナマエの痛々しい姿を見てから約四時間後のことだった。

「いいか、ナマエの保護が最優先だ。あんな名も知れねェ攘夷浪士相手に遅れを取るんじゃねェぞ」

町外れの今は使用されていない雑居ビルの一室。彼奴等がアジトにしているのはそこだ。ナマエさえ人質に取られていなければ、強行突入して斬り伏せればいいだけの雑魚野郎共だろう。だが如何せん俺たちの大切な仲間がそこにはいる。細心の注意を払う必要があるのだ。

「土方さん、姐さんのことはあんたに任せやすぜィ」
「…あァ」
「じゃ、行きやすかィ」
「全隊配置につけ、合図の後突入する」

俺たち真選組を敵に回したこと、ナマエに手を出したこと、地獄の底に落ちるまで後悔すればいい。

「行くぞ」

そこからはものの十数分の出来事だったと思う。ナマエの安全を確保した直後、俺たち真選組が素直に身代金を持ってくるとでも思っていたのか胡座をかいて談笑している浪士共を先遣部隊の一番隊が斬り伏せ、あっという間に俺たちの仕事は終わった。

「簀巻きにしてドブ川に投げ捨ててやりてェところだがねィ、お前らみたいな雑魚でも多少の情報源にはなるだろィ。たっぷり拷問してやんよ」

俺にアレコレ言えないほど瞳孔の開いた総悟がすでに縮み上がっている浪士に追い打ちをかける。ナマエを姉のように慕う総悟だから、今回の件は余程許せなかったのだろう。

「…なんで来たんですか?」
「なんでって喧嘩売られてそのままなんてありえねェだろ」
「もし私のせいで誰かが大怪我したり死んだりしたらどうするつもりだったんですか」
「あ?俺たちがそこまでヤワなわけねェだろうが」
「そういうことじゃなくて…」
「あいつらが全員お前を助けたかったからに決まってんだろ」
「でも、もう私は」
「知ってた」
「え?」
「お前が高杉と繋がってたのは知ってた」
「い、いつからですか…?」
「さァな。ただ、お前が真選組に仇を成す存在だなんて誰一人思っちゃいねェんだよ。あいつら知った上でお前を助けに来たんだよ。みんなお前の飯食いてェんだと、だからさっさと帰ってこい」

元々フラフラした足取りだったナマエはとうとうその場に座り込んで声を上げて泣き出した。あんな目に遭ったのだから当然のことだろうと思い、同じ目線になるように正面にしゃがみ込む。

「怖かったか?」
「あんなの…どうってことないですよ、でも…私…もう真選組に戻れないって思ってたんです」
「そんなの俺が許さねェ」
「副長…好きです、本当に、大好き」
「まァ俺もだな」
「本当のこと言うと晋助…あ、高杉晋助に復縁迫られて嫁に来いって言われてたんです」
「は?」
「でも私は副長のことが好きだから、晋助のところには行けないってちゃんと伝えてきました」
「あれがそんなので納得するたまかよ」
「してくれました。これでも結構大事にされてたみたいで」
「…そうかよ」
「面白くないって顔してますね」
「当たり前だ馬鹿野郎」

あんな事件のあと、無事に生きて帰ってきてくれただけで良いと思っていたがそれとこれとは話が別だ。あの高杉から結婚を迫られていただと?いくら昔の男とはいえ、とんでもないライバルがいたもんだ…。

「副長」
「ん?」

座り込んだままのナマエが縋るように俺に腕を伸ばしたからその腕を引いて立ち上がらせてやると、ナマエは勢いのまま俺に抱きついた。俺は咥えていたタバコを地面に落としナマエと唇を重ねた。俺は知らない間にナマエにかなりハマってしまっていたようだ。

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