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15

「ちょっとナマエちゃん!?これどうなってんの!?」

私が副長への好意を自覚してから数日後、銀時が急に屯所にやってきたと思ったら週刊誌を叩きつけながらこう叫ぶものだから、何が何だかわからず頭にハテナマークを浮かべることしか出来ない。

「…最近よく会いますね」
「俺ァいつからお前の第三の男なんだよ!死んだ魚のような目をした侍のような男ってなんだよ!アァ!?」
「説明してよ、意味わかんない」
「これ見ろってんだ!こんな素敵男子を死んだ魚の目の侍たァ見る目がねェやつだなこのクソ記者」

なんの騒ぎだとばかりに集まってきた隊士の中心で、銀時は持ってきた週刊誌を開いた。

“真選組・鬼の副長ついに結婚か”

見出しはこうだった。それに続いてその相手である“私”の生い立ちやらが事細かに書かれている。

「ちょっと待ってこの写真…!」

載っているのは、私が直接受け取っていた例の写真だった。

「姐さん…こりゃまた厄介なのに絡まれやしたねィ」
「ヤダ…なんでこんなこと」
「問題はお前と副長とやらの結婚じゃなくてだな、これだよ!何で俺とお前が撮られてんの!?」

それは先日銀時が私を屯所に送り届けてくれた時の写真のようだった。ニケツしているもんだから、それはもうべったりくっついている写真。

「ったくなんで俺が第三の男なんだよ。は?俺ァ間男か?」
「ちょっと待って下せェ、土方さんが本命で旦那が二番目ってんならわかりやす。何で第三の男なんですかィ?」
「土方くんですら二番目なんだよ。こいつの本命は攘夷志士〇〇だとよ。次号載るらしいぜ」

たかだか女の嫉妬に巻き込まれただけだと思っていたのにこれはキツイ。本命は攘夷志士なんて、これは晋助のことを言っているのだろう。相手は知っているのだ、私と晋助の関係を…。

「姐さん?顔色悪いですぜィ?」
「…ちょっと部屋に戻るね、ごめん」
「おいナマエ、お前どんなややこしい奴に絡まれてんだよ。教えろ」
「ごめん銀時、まとまってから話すから」

私と晋助の関係がばれたら、真選組に迷惑がかかる。ここだけじゃない、実家の家族にも…。そんなことを思っていると携帯が鳴る。表示された番号は見知らぬ番号で悪い予感しかしない。

「…はい」
「あ、もしもし?あの記事見てくれた?あなたとちょっと話したいことがあるの。来週の週刊誌に貴方の過去が載るか載らないか貴方に選ばせてあげる。貴方の家で待ってるから今から来てくれない?絶対一人で来てね。貴方のことずっと見てるからズルしたらダメよ」

行けば何かしらの事件に巻き込まれて迷惑をかけるのは必至だろう。でも、行かなくても迷惑をかける。それなら…何かしら行動を起こしたいと思った。副長と離れなくてはならなくても。どうせ、他の人を想う彼とは一緒にいられないのだから。





辻斬りが出た。もう何日も続く事件だった。どれだけ捜査しても犯人が見つからないどころか手掛かりさえも掴めないでいた。大変な事件が起きているというのに屯所の連中は相変わらずで、一人必死に仕事をしている自分が馬鹿らしくなった。

「こちとら市中見回りから帰って疲れてるってのに…テメェら雁首揃えて何してやがる!仕事しねェか!」

どいつもこいつも馬鹿面下げて仕事をサボってやがるもんだから、さすがに額に青筋が浮かんだ。

「オイ万事屋、テメェまでここで何してやがる」
「第二の男か。お前ェ大変なことになってんぞ?俺ァただ巻き込まれただけの可哀想な善良な市民だ」
「なに意味のわからないことを…」

何故か騒ぎの中心にいた万事屋に言われ手元の一冊の週刊誌を覗き込むと、なんと俺が結婚するという記事が載っていた。

「誰だリークしたやつ。まだこの屯所の奴らととっつぁんしか知らねェはずだ」
「あんたらの結婚が偽装ってことくらいここの連中は皆んな知ってまさァ」
「ナマエはどうした」
「姐さんなら気分が悪いって部屋に」

その場しのぎの俺の軽率な行動のせいでナマエを巻き込んだことをひどく後悔した。お互い利害一致の関係ではあったが、何かあった時の危険の度合いを考えればナマエの負担が大きいことは明白だった。

「おいナマエ!」

悪い予感とは大体当たるもので、ナマエが身を寄せている客間を訪れてもそこはもぬけの殻だった。ひとりになるな、するなとあれほど口を酸っぱくして言っていた筈なのにあいつは単独でどこかに行ったようだ。

「おい山崎!!ナマエを探せ!それとこの記事を書いたやつとネタ売ったやつを探し出せ!いいな!」

俺は車を走らせナマエの家へと向かった。頼む、間に合え−−−。





「本当に一人で来たのね」
「あなた、あの時の」

電話の主の要望通り、数週間ぶりに我が家へと足を運んだ。そこにいたのは、初めて副長の嫁のフリをした時の見合い会場にいた女性だった。

(なるほど…。何が何でも略奪派だとは思っていたけどここまでタチが悪いとは)

「あなたの要望通り一人で来ました。条件はなに?副長と別れること?」
「そうね。あなたがあの人と別れてくれればそれでいいわよ。次号の記事はなかったことにしてあげる。それで平穏に暮らせるでしょ?」
「残念だけど私と別れても副長はあなたなんかに振り向かないですよ。あの人の心の中には一途に想う大切な人がいるから」
「なにそれ?言ってて悲しくないの?っていうか、あの攘夷四天王高杉晋助の女が今度は真選組副長の女?笑わせないで。何が目的なの?土方さんのことバカにしてるの?」
「何も知らないくせに勝手なこと言わないで。副長のことも、あの人のことも、何も知らないあなたに言われたくない。私の過去なんてあなたに関係ない」
「関係なくなんてないわ。私と彼は利害一致の関係よ。あなたと土方さんが別れれば土方さんは私のもの、あなたは彼の元に帰るだけ。みんな幸せでしょう?」

−−彼ですって?この女まさか、そう思った時には頭に強い衝撃が走っていて、私の意識は暗闇に落ちていった。

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