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「ふぐぢょーっ!」
「うわっ!何だよてめぇ!っていうか汚ねェ!くっつくな!鼻水ついてんじゃねェか!!」
「だっで!うぅ…死んじゃうかと思った!」
「わかったわかったから!今回は俺が全面的に悪かった!謝るから泣くなって!汚ねェから!」
夕飯時、食堂で沖田隊長と唐揚げをめぐって壮絶な争いを繰り広げていたところ、山崎から衝撃の報告があった。「副長が斬られた」って。いやもうね、一瞬で目の前が真っ黒っていうか真っ白っていうかよくわかんないけど頭が働かなくなって…沖田隊長はほくそ笑んでたけどさ。呆然としたまま局長に連れられて副長の病室を訪れて冒頭へって感じです。
副長ったら私に内緒で攘夷浪士のアジトをつきとめて一人で乗り込んだんだってよコンチクショー。いくら私が剣術使えないからって内緒にしなくてもいいじゃん!何も知らないまま副長が死んじゃったらどうするんだよ!立ち直れないよ!
…こんな傷を負いながらも一人残らず捕らえたってか斬った副長は本当にすごいと思う。やっぱりすごいな副長は…尊敬であります。
「斬られたっつってもこんなん三日もあれば治る。近藤さんも心配しなくていいからこの馬鹿連れて帰ってくんねェか?俺も明日には屯所に戻るし」
「死ねばよかったのに土方コノヤロー」
「よぉし上等だ。お前減給してやっからな。」
「冗談でさァ。無事で何より(棒読み)」
「ちったぁ感情込めろよクソ野郎」
「ちょっと総悟、トシも一応怪我人なんだしそのくらいにしとけって。ね?ほら、名前ちゃんも帰りますからねぇー」
「嫌です」
「へ?なに、近藤さんと帰るのそんなに嫌なの!?」
「近藤さん、諦めなせェ…このくらいの年の女はお父さんのものと一緒に服を洗濯されるのも嫌なんでさァ」
「なに!?そんな年ごろなの!?」
「今日は帰りません!誰が何と言っても帰りませんから!」
「名前、頼むから帰ってくれ。ここ病院なんだぞ」
「嫌です。副長私に内緒にしてたから怪我したんです。今日は絶対に副長の言うことききませんからね」
「ったく…」
「名前、早くしないと帰るぞ?」
「良いです。今日はここに泊りますから」
「勝手にしなせェ。近藤さん帰るぜィ」
「はぁ…」
副長がため息ついてるけどそんなの関係ないもんね。今日という今日は許さない。
「なんで乗り込むこと教えてくれなかったんですか」
「お前に言ってどうなる」
「戦力になれなくても心構えくらいしておきたかった。いきなりこんな怪我したって聞かされて、心臓止まりそうなくらい驚いたんですから」
「悪かった」
「そう思うならちゃんと言ってくれないと困ります。無理言ってついて行ったりしないから、ちゃんと言ってください」
「わかったから、もう泣くな。お前に泣かれると困る」
「泣かせたのは副長ですからね。せいぜい罪悪感にでも苛まれてください」
「お前性格悪いな」
「うっさいです」
「頼むから泣き止め」
「だって」
「なんだ」
「本当に怖かった。副長が死んだらどうしようかと」
「俺が死ぬかよ」
「ですよね。人間超越してるし。あ、今日一緒に寝ますから」
「は?」
「勢いで泊まるって言ったけど丸椅子しかないから仕方ないでしょ」
「狙っただろ。今日だけだからな。傷に触るなよ、痛むから」
「痛いなら無理しなきゃいいのに」
「はいはい」
今日ほど心臓に悪かった日はないです。とりあえず無事で何より。
健やかな寝息が聞こえてきたからこっそり寝顔にキスしようとしたら蹴落とされました。…起きてる?