【 オレンジ色の嘘とキス 】
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
(やあナマエ、おかえり)
(メシでもどう?)
(たまには休みなよ、お前も)
過去に縛られ続ける私を、前に進ませようといつも優しく導いてくれたカカシの大切さに気付いたところで、もう彼はこの世にいない。
どうしてあの時カカシの話を最後まで聞かなかったのだろう、どうしてあの時私は任務に着いてしまったのだろう、どうして失わないと気づけないのだろう。
「カカシっ!!」
瓦礫の中から掘り出され、横たわったカカシの亡骸に顔を埋めてみてもピクリとも動かない、冷たい、なんて冷たいんだ…
どうして、どうしてなの。
里の外へ出て、冷静になって、綱手様の言葉を思い出してやっと気が付いた。私にとってカカシがいかに大切な存在であったのか。
私が里の外へ出ることに抵抗がなかったのは、おかえりと笑顔で迎えてくれるカカシがいたからなのに。
寂しいときいつも傍に居てくれたのは、カカシだったのに!
「バカ!あんたまで私を置いていかないでよ…」
冷たいカカシの手を握り、ただひたすら涙を流すことしか出来なかった。私の涙がカカシの顔にポタリと落ち、まるでカカシが泣いているように見えた。カカシ…私はまた失ってしまうのね。今までいっぱいワガママ言ってごめんね。私はカカシの口布をそっと下ろし、その冷たくなった唇に自分の震える唇をそっと合わせた。
その時目の前に眩い光が広がった。
「寝込みを襲うなんて随分大胆じゃないの」
「え?」
「ナマエ…おかえり」
きっとナルトがこの戦いに勝ったんだ。
一度死んだはずのカカシはそう言って嬉しそうに笑った。