「リク、ハル。来てください。」



八戒へ呼ばれ素直に歩み寄る二人。いつにも増してにこにこと笑みを浮かべる八戒に、二人はきょとんと彼を見上げる。

突然、八戒は小柄な二人をまとめて抱きしめると、優しく二人の頭を撫でた。


「お誕生日、おめでとうございますv」


「…なんだよ、突然。」


『八戒…?』



目を細めふいっと無愛想なリクと、蘇芳の瞳を丸くするハル。双子と言っても、やはりそれぞれの反応は違う。

そんな二人の反応に、くすりと笑う。




「せっかくの誕生日ですから。お祝いのハグですvv」


「やっすいプレゼントだな。」


『ありがとー!!』


言葉はどうあれ、どう見ても二人は嬉しそうにしており、八戒も再びふたりを抱きしめる。



「なんだ?何してんだ?」


興味を持ったのは悟空で、くっつく三人を見て嬉しそうに駆け寄ってくる。




『あたしたち誕生日なの!だから、はい!』


「そーなん?おめでとう!」


両手を広げるハルに、何の迷いもなく抱きしめる悟空。目の前でぎゅっとし合う二人に八戒は微笑ましげにうかがう。

もちろんいい顔をしない片割れだが、今日は二人にとって特別な日。諦めたように息をついて笑った。



「リクもー!」


「おれはいいよっ!」


『照れてるー!!』


「照れてねぇ!」


きゃっきゃと戯れる子ども組。嫌がるリクを後ろから抱きしめる悟空。そのさらに後ろから、ふたりへ覆いかぶさる大きな影ができる。



「ハッピーバースデーイ!!リクちゃんv」


「ちゃん付けすんなっ!!」


「悟浄、暑苦しい!!」


むっとする悟空に「なんでオレだけ暑苦しいんだよっ!」と突っ込む悟浄は、どこで話を聞いていたのか、双子が誕生日だと知っていた。

二人から離れるとリクの頭をぽんっと撫でる。



そして、ハルへと向き直ると手に持っていた小さな花を、目の前の少女へそっと手渡した。


「誕生日おめでとう、ハル。」


『あははっ、王子さまみたーい!』

「やっと気づいたか、このやろー!!」


そのまま戯れるように抱きしめる悟浄に、ハルもきゃっきゃと声をあげて喜ぶ。



『あー、三蔵にも抱きついてこよ!』


「おい、おまえから行ったら目的が違うぞ?」


悟浄の言葉にも『いーの!』と呑気に返事をすると、ジープにて新聞を読んでいる三蔵へ躊躇うことなく抱きついた。




もちろん…



「何しやがる、ど阿呆!」


と、お叱りを受けてしまうハル。

もう慣れてしまった少女も、負けじと笑顔のままに訴えかけた。




『あたしら今日誕生日なの!…だから、はい!』


小さな両手を広げる少女は、無邪気に首をかしげて笑う。



誕生日だからなんだ。……というような顔をしながらも、タバコをふかす三蔵。それでも期待に満ち満ちた笑顔で待機するハルに、観念したかのように手に持つタバコを灰皿へ押し付けた。


大きなため息にハルは目を輝かせる。



それは彼が諦めた時の合図だ。




「おら…、おまえが来い。」


たったそれだけの言葉と伸びるその腕に、それはそれはわかりやすく笑顔を綻ばせる。



『さんぞー!!』


「うるせえ。」


『ありがとー!!』


「何も言ってねえだろうが。」


きゃっきゃと無邪気に喜ぶ少女に、少し離れて見ていた一行も微笑ましげに見守る。



ぎゅーっと抱きつく片割れを仲間とともに見守るリク。そんな彼へ伸ばされる手に、その蘇芳の瞳はきょとんとまるくなる。


片手にハルを抱いたまま、リクへと片手を伸ばす三蔵。



「…何?」と尋ねるリクへ、三蔵はやはり一言告げるだけ。



「阿呆、おまえもだろうが。」


「…っ。」


伸ばされた手に引き込まれるように駆け寄るリク。双子を抱いた三蔵は、「…暑苦しい。」と漏らしながらも、その表情は穏やかなものだった。








それぞれの愛を
(いただきます)
















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