「由希くん、最近あまりお元気ではないのですか?」
「え、どうして?」
夕食のお皿を出していると、突然本田さんにそんなことを言われた。
「いえ、何か今日は沈んでらっしゃるような気が…。」
「そうかな?」
なんて平気なふりをしてるけど。本田さんにまでバレてちゃ仕方ない。
元気がないといっても、別に体調が悪いわけではないし、決して言わないけど。
ただ、今日はアイツとなつめが一緒に出かけているんだ。ただそれだけ。
「由希くん、昨日はとても嬉しそうで…お元気でしたのに。」
「え、そうだった?」
昨日の俺を思い出したのか、くすくすと笑う本田さんに少し恥ずかしくなる。
そんなに表情に出てたのかな?
なんて、昨日の自分を思い出そうとしても無理だった。
その代わり思い出されたのは、一緒に帰った時のなつめの笑顔。
今度秘密基地へ一緒に苗を植える約束をしただけなのに、あれほど喜んでもらえるなんて思わなかった。思わずこっちまで嬉しくなって。
「なんだか嬉しそうですね。」
くすくすと笑う本田さんは、笑いながらもお皿へご飯を盛り付けていた。
「ごめん、ちょっと思い出しちゃって。」
「好きな人のことですか?」
「えっ!!?」
思わず大きな声が出る。
本田さんは特に動じることなく、やっぱり笑ったまま俺を見上げた。
「最近の由希くんは、表情が豊かでとても分かりやすいんですよ。好きな人のことを想う時はそうなっちゃうって、お母さんが言ってました!」
「そ、そう。」
本田さんの話に返事をしながらも、できるだけその話を広げまいと、盛り付けの終わったお皿から居間のテーブルへ持って行くことにした。
「はぁ…最近緩んできたのかな。」
――パシッ
緩んだ頬を引き締めるように、両頬を軽く叩く。
これ以上、周囲やなつめに気づかれないように。
「よしっ!」
「由希くん、好きな人がいるんでしょう?」
「ええっ!?」
サッと開いた襖から出てきた紫呉の言葉に、また大きな声が出てしまう。
「いやいや、隠せてると思ったんですか?君も存外抜けてるねぇ。」
「え、ちょっと……え?」
しのぶれど
(色に出でにけり わが恋は 物や思ふと 人の問ふまで)
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