『ねえ、リク!八戒が夕食の準備手伝ってだってぇ!』


「またかよー。仕方ねェなー!」



そんな返事をしながらも嬉しそうに妹の後をついて行くリク。木陰でタバコを咥えながらも、そんなふたりをついつい目で追ってしまう。




「アイツらいねェとすっごく静かなのね。」


「…悟空も寝てるからな。」



隣で同じくタバコを咥える生臭坊主が、ちらっと視線をオレに向けるのがわかる。それに応えることはせず、ただじっと空を見上げていた。


三蔵の言う通り、悟空も近くの木陰で眠っている。さっきまで双子と川で遊んでいたからか、疲れ切っていた。



「なんだかんだでずっと一緒にいるんだモンなァ。」


「………チッ。」


「舌打ちすんな。」


愛想ない対応にも慣れたもので。それがマジのヤツでないことは、十分わかっている。三蔵サマは照れ屋さんだからなァ。




「けど…。」



『悟浄ーっ!!力仕事!八戒が呼んでるぅ!!』


遠くから手招きするハルに片手を上げて応える。タバコを空き缶に落とすと、ゆっくり立ち上がり大きく伸びをした。



『はーやーくーっ!』


きゃんきゃん吠える小動物に思わず笑みが漏れる。馬鹿猿に負けず劣らずデケェ声。小さな身体で懸命に手を振っている。


『あっ!悟空まだ寝てる!!』


ハルは駆けって悟空を揺すり起こす。簡単には起きない相手に、再び何やらきゃんきゃん吠えているようだ。



「おぉい、行くぞ。」


三蔵を置いて八戒の元へ向かう。ハルへ声をかけると、一度悟空へデコピンをかました後、オレの元まで走って来た。



『悟浄にしては素直だね。』


確かにいつもより抵抗はなかった。

ただ今は自分の元に素直に駆けってくるハルに、オレの胸は射抜かれてんのよ。



「ほんとかっわいいよなァ…。」


『…何?しみじみと。てか何が?』


「いやァ…オレってば、ストライクゾーンが広いみたいで困っちゃう。」



『意味わかんない。』とぼやく姿にもニヤついてしまう。


この気持ちが今後どうなるかはわからねェが、今はまだ口にしねェ方が良さそうだ。




「エロ河童!!ハルのこと見すぎなんだよ!!」


『八戒!連れて来たよ!』


きゃんきゃん吠えることシスコンに、それを気にもせずスルーするハルちゃん。八戒はそんな二人を微笑ましげに眺めていた。




わかる…。わかるぜ、その気持ち。



「そのシスコンですら可愛いもんよ。」


「悟浄、もう少し忍んだ方がいいですよ。」




あさじうの
(小野の篠原 しのぶれど あまりてなどか 人の恋しき)










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