だって最初は何てことなかったんさ。


ちょっと人見知りがひどいけど、普通の女の子が入ってきたなぁ…くらい?




『ラビさん、また怪我してますよぉ!』


「あぁ、これはジジイにやられ…。」


『少ししゃがんでください!』



言われるがままに膝を曲げると、ハルの顔が近くへ寄る。もともと30センチ近く身長差がある方だから、こんな近くに寄ることなんて新鮮だった。


それでも意識してるのはオレの方で、ハルは懸命にオレのほっぺに絆創膏を貼り付ける。



『ケンカしちゃだめですよ。』


「あ、ありがとな!」



じっと見上げる桃色の瞳は、いつからこうやって自然に、真っ直ぐオレを見てくれるようになっただろうか。


ふわりと笑うその表情に、オレの胸も容易にキュンとなる。



「何の意識もしてなかったんだけどなぁ。」


『何のことですか?』


きょとんとするハルの頭を優しく撫でる。ぐっと俯く仕草もまた可愛いと感じてしまうんだから、困ったものだ。




「もう抜け出せないくらい深くなっちゃったってことさね。」


『……?』








筑波嶺の
(峰より落つる 男女川 恋ぞつもりて 淵となりぬる)











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