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どれくらいたっただろう。
目元を真っ赤に染めて、すんすん、と鼻を鳴らしながら里桜はおずおずと疾風の腕から離れた。
泣いたのを見られたのが気恥ずかしいのか、疾風と目を合わせずに俯いたままでいる。
「もう…いいのか」
「…、うん…、」
「…そうか…なぁ…、」
「…ん?」
「顔あげろ…」
「な…んで…」
「俺が、見たいから。里桜の顔を」
「はぁ…?」
顔を上げて、疾風の顔を見つめれば、疾風は嬉しそうに破顔した。
「いつもの顔に戻ったな…、」
笑いかけながら、そっと、目元についている涙の粒を拭う疾風。
「見ないで…、」
「いやだ…」
「俺の顔なんて…、見てもなにもないよ…」
「いいんだ」
クスクスと笑いながら疾風は里桜の顔を見つめ続け、見られている間中、里桜は俯き顔を赤らめた。
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