鬼畜狼と蜂蜜ハニー里桜編 | ナノ


  サプライズは衝撃と戸惑い


☆サプライズは衝撃と戸惑い


 放課後、大丈夫だといいはる里桜の手を引き、鈴は小早川医院に向かった。
別に病気でもないのに…、ただ悪戯されただけで顔が赤く気ダルくしていただけなのに、わざわざ医者である隼人に見てもらうのも忍びない。


「鈴、ほんとに…俺は…」
「いいのいいの。それに、兄ちゃん、今日はこれから…母ちゃんの相手≠フ家族にあうじゃん?
その時、兄ちゃんがぐったりしていたら、相手が悪いやつだったら一人じゃ懲らしめらんないじゃん」
「鈴、」
「にいちゃんは、不安なんでしょ?だから、朝あんなだったんだよね…。母ちゃんを取られるから」

ちゃんと、わかっているよ…、と、鈴は微笑む。


「僕も、ちょっと不安。
でも、母ちゃんが決めたことだから。だから、もし、相手の人がスッゴイ悪い人だったら、僕と兄ちゃんで懲らしめちゃお。母ちゃんを守るんだ。

それにね、もし母ちゃんが再婚しても、にいちゃんには僕がいるよ」
「鈴…」
「だからね、元気になって…っと、ほら、病院到着!って、え…?」

話しながらも、隼人が勤める(小早川病院)に無事ついたのだが…生憎、病院の戸は固く締められており、ドアには「休診」と書かれた張り紙がしてあった。


「うぅ…、せっかく来たのに隼人さんに会えない…」

隼人に会えないことに、しょんぼりと肩を落とす鈴。

「俺のつきそいじゃなかったの?まさか隼人さんに会いたかったからついてきたのか」
「そ、そんなわけ…あはは…」

じと…とした目線を投げかける里桜に、わざとらしくごまかすように鈴は笑う。
里桜ははぁ…、とため息をつきながらも、隼人に会わなくても良くなったことにほっと胸を下ろす。

(あんなことされた日に…隼人さんに会いたくないって思う俺って…なんか乙女…か)

 好きな人の前では、自分だってしっかりしたい。
キスマークもつけられていないし、男に抱かれたとばれるわけはないと思うが、今日は隼人に会いたくなかった。

「休診なら仕方ないだろ。鈴。それに俺は大丈夫だって、ほら、早く母さんにこいって言われたところ行くぞ」
「うん…無理はしないでよ…?」
「大丈夫だ…」

携帯でタクシーを呼び、母からこいと言われた料亭をタクシーの運転手に告げる。
北千住にある料亭「流千」は、高級感あふれる料亭であり、ここ最近韓流俳優がお忍びで利用したことから人気が出たらしい。

他にも、政治家の○○だとか、有名人の○○だとかがよくよくここの料亭に入ってくるのをみた…という噂を良く聞く。

料亭は個室があり、個人のスペースが確保されて、話し合いにはぴったりだ…と、里桜の友人であり生徒会副会長でもある柊光(ひいらぎひかる)がこの間話していた。
柊という男は、頭がよく、父親が代議士か何かをしているのでこういう情報をよく教えてくれる。なんで知っているの…という情報までくれることも多々ある。


流千の外観がタクシーから見えると、鈴は「すげー」と目を輝かせる。

「僕、こんな料亭来るの初めて!って、兄ちゃんもか。ねぇ、母さんこんな料亭来てお金払えるのかな」
「母さんの相手が払うんだろ…。こんな料亭をわざわざ…すっごい金持ちなのかも…」
「金持ち!凄い。お金に不自由しないね」
「馬鹿…。あ、すいません、一万円から…。っと、鈴、行くよ」


会計を済ませて降りた里桜が、鈴の肩を叩き、促す。
鈴はこくりと頷き、里桜に続いてタクシーを降りた。

「おにいちゃん、風邪大丈夫なの?」
「大丈夫。お母さんが待ってるから、行こうか」
「うん」

2人は暖簾を潜って引き戸を開けた。




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