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そのまま、里桜は休み時間まで連れられた保健室で過ごした。
保険医は今日留守なのか、保健室には誰もおらず、また盛り始めた疾風といけない行為を及んでしまった。
疾風は2限目になると、俺は授業があるけどお前は辛かったら休め、といって保健室から出て行った。
このままずっと理由なくさぼるのも、皆の模範となる生徒会長としてはいけない。
未だにふらつく身体をなんとか叱咤し、保健室を出ると…
扉の所で不安そうな顔をしている鈴と鉢合わせした。
「おにいちゃん、具合大丈夫?」
小首を傾げ尋ねる鈴。
途端、今まで疾風とやっていた、いけない行為が頭を過ぎり、里桜の顔はほんのり桜色に染まる。
「あぁ…大丈夫だよ鈴」
鈴をぬいぐるみのように優しく抱き締める里桜。
そうすることで、疾風の前で少しささぐれていた心が癒されていく。
可愛い鈴。
癒し系の、鈴。
鈴がいるから、疾風にどんな事をされても里桜は平気でいられるのだ。
「…おにいちゃん?」
少しきつく抱きしめすぎただろうか。
鈴は里桜の腕の中で身じろぎ不思議そうな顔をして里桜を見つめた。
「大丈夫。ちょっと風邪ひいたみたい」
里桜はそう誤魔化して、鈴の身体を離す。
今まで疾風としてきたことなんて、言えそうになかった。
また、一つ、鈴に嘘をついていく。
本当は里桜も隼人が好きなこと、それから、疾風との関係。
大好きな双子だから、嘘はつきたくないのに。
鈴に知られたくないから、秘密ばかりが大きくなる。
「風邪?帰りに隼人さんとこ行く?」
無邪気にそう問いかける鈴。
里桜は、きゅ、っと胸が痛み唇を噛んで顔を逸らした。
「そうだね…」
気ダル気に答える里桜。
「熱有るのかな」
鈴の小さな手が里桜の頬に触れ、里桜は双眸を閉じる。
―言えない。
自分を心配してくれるこの存在に、言ってはいけない。
自分だけで、どうにかできる。
俺は、お兄ちゃんなんだから。
「鈴はお母さんに似て心配症だな」
「そう?あ、僕のプリン帰ったらあげるからね?でも牛乳は駄目」
鈴は未だに身長を伸ばしたいらしい。
毎日かかさず牛乳を飲んでいた。
しかし、その成果は未だに出ておらず鈴と里桜の身長はこの年の平均男子の身長よりもだいぶ低い。
「頑張っても鈴は成長止まってるよ」
「酷い、まだまだ伸びるからね!それに、おにいちゃんと身長変わんないじゃん!そんな事云ったらプリンあげないよ?」
「ごめんごめん」
里桜は笑いながら鈴の頭を撫でた。
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