鬼畜狼と蜂蜜ハニー里桜編 | ナノ


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「…、鈴に…手を出したら…」
「出さねぇよ。ま、お前が相手する限りは…だけどな…」

にたり、と口角をあげて疾風は微笑する。
意地の悪い、含んだ笑み。

でも、どこかそれが様になり、かっこよく見えてしまうのは、疾風、という人間性のせいだろう。

イラついた里桜は疾風に背を向け距離を置こうとするが、そうはさせまい…、と疾風は無理やり里桜の手を掴んだ。


「ほら、里桜、俺の事はなんていうんだ?」
「…ご…」
「聞こえねぇ」
「…ご主人様、」

強要された言葉を苦々しく呟き、里桜は俯く。
それに対し、疾風は満足そうに微笑み、背後から里桜の身体に覆いかぶさるような形で里桜の腰を引き寄せた。
疾風の身体に抱き寄せられる、里桜。

「なー、りお」

耳元で囁く、疾風。
ぞわり、と得体のしれない何かが、里桜の中を駆け巡る。
普段疾風は、苗字で里桜のことをよんでいる。

しかし、二人っきりになったときだけ、里桜≠ニ呼ぶのだ。
そして、二人きりになったとき。
二人の関係は、教師と生徒から、ご主人様と奴隷へ変化する。


 里桜のかけている伊達メガネを外して、疾風は顔を寄せる。

「ご主人様に気持ち良くしてもらいたくないか?」
「…っんな…」
「大丈夫、大丈夫。
今日は自習にするし、時間はたっぷりあるからよ」

里桜の耳朶を甘噛みし、もぞもぞ…、っと里桜のワイシャツの隙間から素肌へと手を入れた。
こうなったら、もうどうしようもない。
どこか今日もこうなる予想はあった。
どうせ、こうされる…と。
里桜は疾風にされるがまま、大人しく瞳を閉じる。


 里桜と疾風がこんな関係になった日。
今でも、あの日の自分は馬鹿だった、と里桜は思う。
あれは、生徒会が終わった放課後のことだった。

その日、生徒会役員である里桜と、同じく役員であった柊光(ひいらぎひかる)は、雑務に追われていた。新任したばかりだから、また仕事が多いのだろう。

通常、5時にはいつも帰れるのだが、その日はあれこれと片付ける書類が多くなって、結局すべての事が片付いたのは6時を大きく過ぎたときだった。

早く帰らないと、母親にまた小言を言われる…、と足早に里桜が鞄を取りに戻った時。

「ん、…せんせぇ…」

どこか媚びたような、甘い声が教室から聞こえた。
なんだろう?そう思ったのが里桜の運のつきだった。

教室では、小早川疾風と、見知らぬ可愛い生徒がキスをしていたのだ。
それも、里桜たちの学校の生徒じゃない。別の学校の生徒だ。

「や…んっん…」
舌までしっかりと入れているような、大人のキス。
見ているこっちも充てられるような、激しいキスだった。


 男子生徒の方は、ぽやん、としていてやってきた里桜に気付かなかったようだが…
疾風の方はばっちり気づいたらしく…、里桜の方をみやると、にやり、っと笑った。
そして、里桜を挑発でもするかのように、見せつけるようにキスを続けた。

 未だに、初恋の人・隼人を思うだけの里桜には、そのキスは刺激が強すぎた。
それ以上、見ていられなくなり、結局里桜は鞄を取らず走ってその場を後にしたのだ。

そして、次の日。
あろうことか、疾風は里桜を呼び出し、「昨日見てただろ?顔赤くしながら…」と言って、里桜の手首を自分が身に着けていたネクタイで拘束した。

ただ拘束されれば別になんでもないが、疾風は「口止させないと…なぁ」などといい、里桜の衣服を脱がせ、更には恥ずかしいポーズを取らせ、携帯に映した。
それ以来、里桜は、疾風の玩具になっているのだ。

なにかあれば、この写真をネットに出すし、それどころか里桜の大事にしている鈴にも手を出すと脅して。
卑怯な脅迫だが、鈴に手を出すと言われては、反故できない。
里桜は、しぶしぶだが疾風の玩具になってしまった。
 
しかもただの玩具じゃない。
身体(ヴァージン)は奪われてはいないものの、其れ一歩手前の行為まで疾風は里桜にしてくるのだ。

自分は、ほんと、恋愛運がない…、と里桜は思う。
同じ双子の鈴は、未だに隼人を淡く思っているのに、自分は…身体は抱かれていないにしろ、それと同じ行為を暴君な俺様に強いられているのだから。

そもそも、あの隼人と会った病院の日から鈴と自分は大きく違っていた。

鈴は、あの日、隼人に出会い、笑っていた。
しかし自分は、そんな鈴を羨ましく思い、駆け出したあげくに人とぶつかり、泣くはめになった。

そういえば、里桜がぶつかった青年は、今思うと担任に少し似ていたかもしれない。
おぼろげな記憶だが、生意気、というか傲慢なところが似ていた、と思う。




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