勘違いイケメンぼっち×いじめられっ子体質ぼっち
ヒソヒソ
ヒソヒソヒソ

ああ…またか…
また、俺はひとりぼっちになるのか…

昔から、俺が仲良くなろうと話しかけると、みんな慌ててどっか行ってしまう。
そのせいで俺には、友達と呼べるような親しい奴は今まで出来なかった。
周りはいつも俺を遠巻きにして見るだけで、決して近付いて来ようとはしない。
そのくせこっちをチラチラ見ながらコソコソと話す。

きっと俺の悪口でも言われてるんだろう。

小学生の頃からずっとこれで、嫌でも一人ということに慣れてしまった。
特に俺は、何故か男からよりも女から反感をかうことが多く、下駄箱や机の中にはよく不幸の手紙や果たし状が入れられていた。
勇気を出して指定された場所に行くと、誰も来なかったり、目の前までは来るが何も言わず走り去ってしまうなど、身体的な被害はないが精神的な被害をよく受けた。

きっと友達すら出来ないのは何か自分に原因があるからだろうと思い、見た目には人一倍気を張り、積極的に話しかけようともしたが結局どれも意味を成さず、知り合いすら出来なかった。
ここまでして俺に友達が出来ないのは、何か前世で悪い行いでもしたんだろうと予想し、まだ誰にも話し掛けてないというのにコソコソと指を指され、何か言われているこの状況に俺はもうこの3年間の高校生活を諦めた。





昔から僕はいじめられる事が多かった。
おどおどした性格でいつも俯き、前髪で顔を隠している僕は格好のいじめの標的だった。
例に漏れず高校でも上履きを隠されたり、お金をせびられたり、僕に聞こえるように悪口を言ったりと嫌な思いをしてきた。
だけど言い返すのが怖く、反抗することも出来なくて、大人しく言うことを聞いてきた。

それが変わったのが高校に入ってからの2回目の体育でだった。
柔軟体操をするために『二人一組になれ』と体育教師は言ったが、友達の居ない僕は当然あぶれてしまった。
柔軟体操をする相手が居ないことを先生に言いに行くと、先生はキョロキョロと周りを見渡し、ある一点で視線を止めた。
「桜木、お前も一人だよな?真町と二人一組になれ」
先生の声に僕は目を丸くし、思わず声が出そうになった。

桜木くんは僕の今までの人生の中で一番のイケメンだ。
テレビや雑誌に出ている芸能人やモデルなんか目じゃないぐらい、桜木くんはとてもカッコイイ。
桜木くんはクールでよく一人で居るのを見掛けるが、素っ気ない訳ではなく、クラスメートが困っている所を手伝うなど、見た目だけじゃなくて中身もとても良い人だ。
嫌味のない桜木くんは女子からも男子からも人気で、影では桜木くんの親衛隊が出来てる程。
高校生活が始まって数週間しか経っていないのに、既に何人もの女子が桜木くんに告白しているらしい。
どれも叶わなかったみたいだが、どの女子も諦めてる様子はなかった。

そんな桜木くんと組まされるなんて、今以上のいじめをされるんじゃないかと怖くて正直組みたくない。
だけどそういう訳もいかず、先生に無理矢理桜木くんの前まで連れてかれ、有無を言わさず組まされた。


案の定周りからの視線が僕の身体中に刺さり、気まずくてたまらない。
そして周りからの視線以上に、何故か桜木くんからも近距離でガン見され、さっきから気になって仕方ない。

「あの…桜木くん?どうかしたの?」
「っえ?あっ…いや、その…真町くんは良い人だなって…」
「…?」
「昔から二人一組になる時は何故か周りが騒ぎ出して、いつも先生と組んでたから、その…先生以外と組んでくれる人初めてで…」
いつものクールさなんてそこにはなく、しごく嬉しそうに照れ笑いをする桜木くんに、僕は呆然としながら彼を見つめた。

「あと俺、……何故か皆に嫌われてるみたいだから、こうやって面と向かって喋るのも初めてなんだ…」
「…その、真町くんが迷惑じゃなかったら、また話し掛けてもいいかな?」
そう言って後ろから僕の背中を押す桜木くんは、きっと不安そうな顔をしているんだろう。心持ち声が震えている。
皆からの痛い程刺さる視線なんて一瞬で忘れ、僕は未だかつてない程の使命感に駆られた。

『おどおどした性格でいつも俯き、前髪で顔を隠している』
それが僕、真町雪緒だったが、僕は今日初めて誰かのために自分も変わろうと思った。

後ろを振り返り、真っ直ぐと桜木くんの目を見て、自分が作れる限りの最高の満面の笑みを浮かべた。
「桜木くん、僕とお友達になってくれませんか?」

目が落ちてしまうんじゃないかと心配するぐらい桜木くんは大きく目を開かせ、そしてキラキラと目を輝かせた。
驚きすぎて声が発せないのか、僕の目を見ながら何度も首を縦に振った。







おまけ
柔軟体操をしながらお互い軽い自己紹介をすると、僕の思っていた通り、桜木くんは大きな勘違いをしていた。
「あのさ、桜木くんは自分の容姿のことどう思ってる?」
「え?うーん…普通じゃないかな?」
「…自覚無いみたいだけど、桜木くんはめちゃくちゃカッコいいよ。僕の人生の中で多分一番」
僕の返答を聞き『えっ?あっ…へ?』と謎の声を上げながら桜木くんは徐々に顔を真っ赤にさせていった。

「…あと桜木くんは皆に嫌われてなんかないよ。むしろ皆、桜木くんのこと好きだと思う」
何も返答が聞こえず桜木くんを見ると、アワアワと口を開けたり閉めたりし、どうすればいいのかわからなかったのか、突然桜木くんは僕の口を手で塞いだ。

「…真町くん、あの、頭がついていかないからちょっと静かにして」
言い過ぎたと後悔しつつ、ゆっくり頷くと『突然ごめんね』と言いながら口から手を外してくれた。

「僕こそごめん。でも僕の言ったことはどっちも本当だから、そのことだけは忘れないでね」
戸惑いながらも頷く桜木くんを見て、早く僕以外にも友達が出来ればいいなと願う。






解説
人に注目されて騒がれるのは、いじめられている状況と同じ。
というような事をあるアニメのキャラクターが言っていたので書いてみました。

最初は桜木くん視点で、その後はずっと真町くん視点です。
今までいじめられっ子体質のおどおどだった真町くんだが『桜木くんは僕なんかと違って皆から必要とされてる人間なんだ。それなのにこんな誤解してるなんて…僕がなんとかしなきゃ』という謎の使命感にかられ、変わろうと決意した。
勘違いから周りから嫌われていると思っている友達0人のイケメン桜木くんと、いじめられっ子体質のぼっちだった真町くんとの友情以上恋人未満のほのぼの。


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