人見知り美形×平凡
僕の席の後ろには、いつも髪の毛で表情の伺えないボサボサオバケが居ます。
そして何故か僕は今、そのボサボサオバケに告白をされています。

「山中の事、好き」
あっ、山中って僕ね。
フルネームは、山中幸汰。
至って平凡な高校2年生です。

「その、山中が付き合ってくれない、なら、…今から山中を、犯す」
ボサボサオバケ改め喜村は、ボサボサな髪の毛のせいで顔をちゃんと見ることが出来ないが、きっと真顔でそう言った。

「う、嘘だよね?」
「…そう思うなら、そう思ってくれて、構わない」
「……わかった。付き合い…ます」
信じられなくて確認をとるため聞くと、僕を試すように喜村は返事を返すので怖くてOKを出してしまった。



あれから、メアドとケー番を交換し、僕の家の前まで送ってくれた。
歩いてる間はお互い始終無言で気まずくて仕方がなかった。
だけどその気まずい時間もやっと終わった。
ちらりと喜村を見るとやはりボサボサ髪のせいでどんな表情をしているのか伺えない。
一応送ってもらったお礼を喜村に言い、家の中に入ろうとしたが突然後ろから引っ張られ喜村に抱き締められた。

「なっ!何?」
少し抵抗し、拘束を緩めて貰おうとしたが、逆にさっきよりも強く抱き締められてしまった。

「幸汰、好き…大好き」
突然の名前呼びと『好き』という発言に驚き、少しの間固まってしまったが直ぐに我に返ると、そこにはもう喜村の姿はなかった。




ベッドに寝転がりため息をつく。
今日は驚きっぱなしの1日だった。
朝学校に着き、下駄箱を開けると中にはラブレターが入っていた。
女の子からの初めてのラブレターに眠気も吹き飛び、周りにバレないよう一人内心喜んだ。
授業中もあまり集中出来ずずっとドキドキしっぱなしだった。
今朝の出来事なはずなのにもう懐かしく感じる。

結局ラブレターの送り主は女の子ではなく喜村だったんだけどね…
でもなんで喜村は僕の事が好きなんだろう?
1年の時も同じクラスだったけど、近い席になったのは最近が初めてだし、キッカケとかないはず…なんだけどな?

喜村はいつも一人で行動し、あんな身なりのせいで男も女も、それに先生までも近寄らない。
だけど頭が良く、スポーツも出来る。
あの不潔そうなボサボサ髪さえ何とかすれば絶対にモテると思うのに本当に勿体無い…

冷静に喜村の事について考えるが何故好かれたのかは全く思い付かず、考えもどんどん脱線して行く。
そもそも男と男が付き合うなんてあり得ないし、おかしいって…
僕は無理矢理喜村に脅されただけで本当は喜村のことなんて好きじゃないし!
まぁ、嫌いって訳でもないけどさ‥

どうすれば喜村と別れられるのか考えていると、携帯がメールが来たとピコピコと点灯していた。
誰だと思い見てみると喜村からだった。

――――――
From喜村
Sub(non title)
幸汰は俺の事、嫌い?

――――――

今の段階では好きでもないし嫌いでもない
だけど、もう少し身なりをしっかりしてくれればいいなとは思うなと僕の本音を送る。

――――――
From喜村
Sub(non title)
わかった

――――――
えっ…わ、わかったって…何が?
喜村の言葉を不安に思いながらも無理矢理僕は見なかったフリをして眠りについた。



あれから結局『わかった』と言う喜村の言葉がどういう意味なのか気になり一睡も出来ず、朝になってしまった。
教室に入るのが正直とても怖い。
喜村っていつも学校へ来る時間が早いし、もしかしたらもう喜村が教室の中にいるかもしれない…
ウジウジと扉の前にいてもしょうがないと腹をくくり教室に入ると、教室の中には5〜6人だけで喜村は居なかった。

昨日から喜村が何かしでかすんじゃないかとドキドキして眠れなかったが、今はホッと安心し眠気が襲ってきた。



ザワザワザワザワと騒がしい声に眠っていた僕の意識が浮上する。
1時間目が始まるからにしてはうるさ過ぎる騒がしさに、状況を確かめるために目を薄く開けると、目の前には美形さんが居た。

「おはよ、幸汰。眠い?」
知らない誰かにビックリしつつも周りを見渡すと、皆こちらを見ていた。
女子はコソコソと「カッコイイ」「あの人って、……なの?イケメン」「や〜ん、付き合ってくれないかな?」と言い。男子は唖然顔をしている。
きっとこの目の前にいる美形さんがみんなの注目を集めているんだろう。

「まだ、HRまで、5分ある」
「‥お前、誰?」
美形さんは少し驚いた顔をした後、ニッコリ笑い、僕の頭を撫でた。
「喜村、だよ?」
喜村って、ボサボサオバケの?
昨日僕の恋人になった?
「意味…わかんない…」
「幸汰の事、好き、だから、頑張った」
昨日まで顔に被っていた髪は一切なくなり全体的に髪の毛も短く、サッパリして完全に顔が見える。
…もしかして昨日の『わかった』ってこういう事…?
表情の伺える今、喜村の顔は少し強張りあまり僕と目が合わない。
そりゃー、昨日より断然見た目はよくなったけど喜村のそんな姿を見て、少し心が痛くなる。
無理しなくていいのに…

僕は席から立ち上がり、目の前にいる喜村の腕を掴んで教室から出た。
いく場所は特に決めていなかったが、勝手に足が屋上に向かった。

屋上に着き、僕はクルリと喜村に向き喋り出す。
「喜村、僕無理してる喜村なんて見たくないよ?」
喜村は、僕の発言に目を丸くさせたあとゆっくりと喋る。

「幸汰は、今の俺、嫌い?」
僕のために変わろうとしてくれてる喜村の気持ちは嬉しいし、そんな健気な姿に少しきゅんきゅんする。

「嫌いじゃない。…ただ、喜村に無理して欲しくなくて」
「無理、してない。幸汰に、好き、言って欲しくて」
ぎこちなく笑う喜村に僕の心は射抜かれる。
邪魔なものがなくなったおかげで喜村の表情をバッチし見ることができ、思いのほか表情豊かで僕の一言一言に表情を変える喜村が可愛くて仕方ない。

「好き、だよ」
そう言ってやるとやはり僕の想像通り嬉しそうにぽやぽやと笑う。
これが僕の物なんて凄く嬉しいかもしれない。

「俺も、幸汰のこと、好き」


昨日まで男同士なんてあり得ないし、おかしいと思い
その上どうすれば喜村と別れるのか悩んでいたが、今はそういうのを全部投げ捨て、
ただただ喜村の好きなようにさせてやりたい。

喜村は案外可愛いかもしれない。





解説
人見知りのコミュ症な美形な喜村くんの健気さや可愛さや一生懸命さにいつか幸汰くんはノックアウトされます。今の段階でも既にノックアウト気味だがもっと喜村にデレデレのきゅんきゅんになります。

喜村くんは昔は美少年だったので、同級生には『女みたいだ』とからかわれ、大人にはイヤラシイ目で見られ
どんどん人見知りのコミュ症になり、顔を髪で隠すようになった。
高校に入り誰とも接するつもりはなかったが体育で2人1組になる時に組む相手が居なくオロオロしている時に幸汰くんが『僕と一緒にやろ』と声をかけてくれた。それから一方的に片想いし、2年になり席替えで前後になれたときは泣いて喜んだ。


prev next

bkm
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -