「アレルヤ!」
弾んだ声が名前を呼んだ。振り返ると、唇にぴと、とオニキスの指が触れる。
「…?」
ふわりと鼻先を芳香が掠め、唇に甘い何かが残る。不思議そうに唇についたそれを舐めとるアレルヤに、オニキスはにこにこと笑顔を向けた。
「薔薇の花びらでジャムを作ったの。どう?甘いでしょ。」
手に持った小瓶を見せて微笑む姿に、自然とこちらの頬も緩む。二色の瞳を穏やかに細め、アレルヤもオニキスに微笑みを返した。
「うん、甘いね。美味しいよ。」
素直に感想を述べれば、嬉しそうにまた笑うオニキス。笑顔の絶えない彼女の側はとても暖かく、とても居心地がいい。
「けど、」
そっと手を伸ばし、アレルヤは自分を見上げる彼女の頬をいとおし気に手の平で包み込んだ。そのままゆっくりと距離を詰めれば、オニキスは恥じらいに頬を薔薇色に染める。
「アレ、ルヤ…っ」
零距離でその存在を感じ、重なり合う唇にはどんな甘味も勝らない。赤く熟れたその果実を指先でつとなぞり、オニキスの瞳を覗き込む。
「…こっちの方が甘い、かな。」
「…!」
自然と口をついて出た本音に、オニキスは一瞬言葉を失って。
潤んだ瞳は、再び近づいた距離にゆっくりと閉じられていった。
ロザリウム20090818
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