ベッドサイドでけたたましく鳴り響く目覚まし時計を、手探りで捕まえ黙らせる。カーテン越しに朝の目映い光が差し込んでいた。

オニキスは起きようと身体を動かし、しかし後ろから伸ばされた腕がそれを遮る。そのまま彼の腕の中に引き込まれてしまえば、そこから抜け出す術なんて持ち合わせていなかった。



「アレルヤ…」



「……もう少しだけ…」



たしなめるように名前を呼ぶと、寝惚けた声がそう答える。仕方なくアレルヤの方に体を反転させて向き合うと、まだ眠りの淵を行き来しているのか、うとうとと微睡む姿が目に入った。

手を伸ばし、顔に掛かった髪をそっと払ってやる。四年前よりいくらか精悍さを増した顔付きも、眠っていると無防備なものだ。四年という月日が、長かったのか短かったのか、オニキスにはよくわからない。あっという間だったという気もするし、気が遠くなるほどゆっくりと時が流れていた気もする。



「早く起きないと、皆に怒られるよ?」



オニキスはアレルヤの胸元に頬を寄せた。どちらにせよ、今こうして彼が隣にいてくれるという事実がありさえすれば、過ぎ去った日々のことなどもうどうでもいいのだ。



「…ん……」



起きる気になったのか、頭上から名残惜しそうな声が聞こえた。ぴたりと寄せた身体から伝わる、穏やかな心音が心地好い。顔を上げるとまだ眠そうな金銀の双眸がオニキスを見つめて微笑んだ。



「……オニキス…」



「うん?」



「おはよう…」



「…おはよう」



存在を確かめるように、アレルヤはオニキスの身体を包み込む。目が覚めた時誰よりも近くにいて、誰よりも早くその声を聞ける。何でもないことのようで、それが自分にとってどれだけ重要な意味を持つことなのかを、朝を迎える度に身を以て知った。



「好きだよ、オニキス。」



「!…知ってる。」



「けど、言いたくて。」



「…ん。嬉しい。」



不意の言葉に顔を赤らめ、染まった頬を隠すように顔を埋めるオニキスの髪を掬い上げる。指先に絡ませたその一房に唇を寄せる。きっとどれだけ口にしようと、言い足りることなどないのだろう。ささやかで、これ以上ない幸福を感じながら、また新たな一日が幕を開ける。







幾つもの朝を二人で











20090530



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