ドアの隙間から漏れる光に、オニキスはロックオンの自室の前で足を止めた。
「ロックオン…まだ起きてるの?」
煌々と明かりの点いた室内を覗くと、ベッドの上に無造作に体を投げ出したロックオンの姿が目に入る。うとうとと微睡みを繰り返す彼の側に近づいて、オニキスはその頬を何度かつついた。
「ほら、ロックオン。眠るならちゃんと枕に頭乗せて寝なさい。」
「んー…オニキス…?」
薄目を開いて小さく呟き、ロックオンはまた直ぐに目を閉じようとする。
「…全く。ほら、寝るならちゃんと寝て。」
捲し立てるように言われ、ロックオンは渋々と身体を起こした。それを確認し、オニキスは壁際にある照明のスイッチに手を伸ばす。その瞬間、突然声が掛かった。
「待て、消すな。」
慌てたような、どこか切迫した語調で言われた言葉に、オニキスは手を止め目を丸くする。
「何で?電気点けたまま寝ると目の疲れ取れないわよ?」
「いや…いいから、消さなくていい。」
「もしかして、暗いと怖くて寝れない!…とか?なんて、ね。まさかそんな訳…」
「………。」
冗談混じりに言ったつもりだったのだが、幾ら待っても返答が返ってこない。どうやら事実らしく、ロックオンは気まずそうにオニキスから視線を逸らした。
「……え…、図星…?」
「……………………………………悪いか。」
「あ、うそ。認めた。」
アイルランド人の白い肌は、色の変化が直ぐにわかる。淡く紅潮していく頬を見て、敏腕狙撃主の意外な弱点に、オニキスは思わず口許を押さえた。
「じゃあ怖がりなロックオンのために電気は点けておくわね。おやすみ。」
暗いと怖くて眠れない、だなんて。いつも大人で余裕ぶったロックオンが。あのロックオン・ストラトスが。
意外過ぎる。というか、
(可愛過ぎる…!)
込み上げる笑いを必死に隠しながら、からかうようにそう言って部屋を出ようとすると、後ろから制止の声が掛かった。
「…いや、やっぱ消せ。」
「消せって…暗いの怖いんでしょ?」
「いいから消せ。そんで、ちょっとこっち来い。」
「…?」
取り敢えず言われるままに部屋の電気を消して、再びロックオンの元に戻る。と、突然伸びてきた手に腕を掴まれ、あっという間にベッドの中に引き込まれた。
「わ、ちょ…!?ロックオン!」
上擦った悲鳴を上げるオニキスを、ロックオンは逃すまいとぎゅうっ、と抱き竦める。さながら今のオニキスは、小さな子供が抱いて眠るテディベアのような状態だ。
「ちょっ、これじゃあ私が眠れないってば…!」
「…知らないね。おやすみ、オニキス。」
至近距離で囁かれ、オニキスは身体を硬直させる。
「…もう!」
恥ずかしさと気まずさに、自棄に
なってロックオンの胸に顔を押し当てると。
長い指先が優しく髪を撫でた。
20090218
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