「…オニキス」
肌の上を滑る細い指の感覚に、ハレルヤは綺麗な金色の瞳を恍惚の色に染める。無邪気とも言える残虐性はなりを潜め、今オニキスの下にいるのは色香を纏った一人の男だった。
どこまでも快楽に従順で、欲望のままに体を欲し求めてくる彼。苦痛には滅法強いが、快楽には滅法弱いのだ。このハレルヤという男は。
「ハレルヤ…」
胸の上に寝そべり、整った顔立ちを見つめながら引き締まった体躯に手を這わせる。首筋に軽く口付けるとぴくりと肩が跳ね、オニキスはクスクスと笑い声を洩らした。
「首、弱いんだ。ハレルヤ可愛い…」
「るせ…」
頬にほんのりと紅が差し、それを隠そうとするかのように、オニキスの顔を引き寄せて唇を重ねる。
「んぅ…っ」
どこか乱暴な、それでいて一片の理性さえも奪い取ってしまう口付け。薄く目を開いて盗み見れば、普段は絶対に見られないであろう穏やかな表情がそこにあり、オニキスは満足気に頬を緩め、再び目を閉じた。
きっとハレルヤのこんな表情を見られるのは自分だけだ。言いようのない優越感と独占欲に、体の芯が熱くなる。
「…はぁっ」
求められれば求め返し、次第に深くなるキスに溺れていく。背中に大きな手が回り、肩胛骨をなぞり、背筋を辿って腰を伝う。あれだけ非道な殺し方をする手からは考えられないほど優しい愛撫に、オニキスはうっとりと目を細めた。
「寝かさねぇからな、覚悟しとけよ…。」
耳を擽る低い声音。触れ合っていられるだけで満足で、それだけでは物足りない。
「望むところよ。」
濃度を増した金の眼差しに誘われて、オニキスは全てを委ね長い夜に身を投じた。
金色に溺れて20080709
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