彼が昔人革連の超兵研究施設で人体実験を受けていた事は知っていたしその記憶がもう一人の彼を苛んでいることもよく知っていた。

過去と決別する為にと研究施設への武力介入を実行したあの日以来、ハレルヤは極端に口数が減ったと思う。



「ねぇ、ハレルヤ。」

「………あァ?」

少し遅れて返って来た生返事にオニキスは溜息をついた。完全に別個の人格であるとは言えハレルヤとアレルヤは表裏一体の存在だ。主人格であるアレルヤに影響を受けて、それなりに気分が滅入っているのかもしれない。

「ねぇ、ハレルヤってば。」

「だから、何だ…っ」

振り向き様のハレルヤの両頬を包んで、口付けて言葉を奪う。ゆっくりと唇をなぞるようにキスを送り、オニキスは間近にある瞳を覗き込んだ。突然の行動に動揺したのか、強い金色が一瞬揺らぐ。

「なっ、オニキス…てめ…」

「…隙だらけ。」

励ますなんて私はそんなに器用じゃないし、掛ける言葉もわからないから。口角を上げてそうとだけ言ってやる。

「…るせぇ。」

「…!」

不器用な彼からの返答は、少しだけ乱暴な、けれども優しいキスだった。





伝わる

不器用な私達の表現方法。












20080507



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