真夏の太陽は容赦なく降り注ぎ、アスファルトからは照り返した熱気が立ち上る。立っていても座っていても喋っていても黙っていても、暑い。クーラーの効いた室内にいるならまだしも炎天下にいれば尚更だ。


「あ〜、あつい〜…」


「だったら家ん中入ってりゃいいだろ?」


ガレージの日陰に避難し、オニキスはTシャツの襟元を掴んでパタパタと風を送りながら、庭先で愛車を洗うライルを眺めていた。


「うぅ、だって…」


暑さにうだりつつも動こうとしないオニキスに苦笑を溢し、ライルはふと手に持ったホースとオニキスを見比べる。


「なぁ、オニキス。」


「ん〜…な〜に〜…きゃあ!?」


突然ばしゃりと冷たい飛沫が身体に掛かり、間延びした返事が悲鳴に変わった。驚いてライルを見ると、こちらに向けてホースを構え、したり顔で笑っている。


「ライル!何すん…わわっ!」


「暑いんだろ?だから少しでも涼しくしてやろうと思ってさ。」


「だからって、ちょ、やだライル!止めてってば…!」


再び勢いよく水を掛かけられ、オニキスは逃れようとガレージから飛び出した。


「狙い撃つぜぇ!」


「いやぁ!撃たなくていいから…!」


迸る流水は確かに火照った身体に気持ちいいが、服を着たまま水に濡れるのにはかなり抵抗がある。しかしそんなことなどお構い無しに、ライルは逃げ惑うオニキスをホースで追い回した。


「もう、びしょ濡れじゃない!」


ぽたぽたと雫を滴らせながらライルを睨み付けるが、当の本人は視線を軽くいなし、一点を見つめたままぽつりと呟く。


「…へぇ、今日はピンク、ね。」


「え?…あ。」


一瞬何を言っているのかわからず、その視線を辿ってオニキスは硬直した。着ていた白いTシャツは水に濡れて肌にべったりと張り付き、下着が完全に透けてしまっている。

慌てて両腕で胸元を隠すと、オニキスはみるみる顔を真っ赤に染め上げた。


「やだ!もう…ライルの馬鹿!」


「やらしー格好。」


「誰の所為よ!」


ひとしきり悪ふざけを終えて満足したのか、ライルは蛇口を止めると憤るオニキスを捕まえ洗ったばかりの車のボンネットに押し倒した。


「え…待って、ライル…!?」


徐々に縮まる距離に焦りを感じ声を上擦らせるオニキスに、ライルはどこか不敵な笑みを浮かべて平然と答える。


「平気だって。こんな暑い真昼に外出てる物好きなんて、俺達くらいしかいねぇだろ。」


「や…、そういう問題じゃ…んんっ」


制止の言葉を押し切り、ライルはオニキスの唇を奪い取った。最初は戯れる程度に軽く。徐々に長く、貪るように深く。


「オニキス…」


吐息の合間に発せられる声が耳を擽り、抵抗する力を削いでいく。こうなったが最後、オニキスは最早完全にライルのペースに呑み込まれていた。舌先に翻弄され、息苦しくなって軽く胸板を叩く。


「はぁ…っ…」


長い口付けから解放され、潤んだ瞳を向けるオニキスを軽々と抱き上げると、ライルは家に向かって歩き出した。咄嗟に首に腕を回し、オニキスは整った彼の顔立ちを伺い見る。


「…ライル?」


「この格好のままだと流石に風邪引くだろ?…ってのは、建前か。」


「…?」


解せない様子で見上げてくるオニキスの唇にもう一度キスを落とし、ライルはその耳元に囁き掛ける。





COOL DOWN? HEAT UP!

続きは中で…、な?











20090709



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