扉の向こうから聞こえる談笑に、ティエリアは足を止めた。整った顔を少し顰めて、談話室の扉を開ける。案の定、ソファに並んで腰掛けるオニキスとロックオン・ストラトスの姿が目に入った。

膝の上に置かれた一台のノートパソコン。そこに何かを打ち込みながら、隣でそれを見るロックオンと笑いながら言葉を交わす。オニキスが他のマイスターと会話をすることは、機体整備士という彼女の仕事上必要不可欠なこと。そうでなくても当たり前のことだ。それなのに、何故か酷く不快な気分になった。

「あ、ティエリア!どうしたの?」

談話室に来るなんて珍しいね、と、オニキスが顔を上げて笑顔を見せる。別にこれと言った用事なんて無い。ただ、オニキスが他の誰かと一緒にいることが気に入らなかった。

「前回の機体テストの結果について、いくつか確認しておきたいことがある。」

思わず口をついて出た嘘に、オニキスは疑いもせずに頷く。

「了解!じゃあ、これ終わったらね。すぐ終わるから、ティエリアもこっち来て座ったら?」

「…遠慮させてもらう。」

一体何がしたかったのか。自分でも理解出来ない己の行動に憤りを感じ、ティエリアは身を翻した。

「あ、行っちゃった。」

閉じた扉を見て、オニキスは首を傾げる。

「なるほどねぇ…。」

「え、何?ロックオン。」

「行ってやれ、オニキス。機体テストが終わったらまた報告しに行く。」

「…?うん。じゃあ、またね。」

ノートパソコンを畳んで、談話室を出るオニキスを見送る。

「…ったく、あれだけ睨まれたら嫌でもわかるっての。」

何度か自分に向けられた朱色の鋭い視線を思い出し、ロックオンは苦笑を浮かべた。



「ティエリア!」

少し先を行く後ろ姿に呼び掛けて後を追うと、角を曲がった所で、立ち止まっていたティエリアの背中にぶつかった。

「わぁ!ごめん!!」

顔を上げれば、突然両腕がふわりと背中に回される。

「え…?ちょっ、ティエリア!?」

「…煩い。」

驚いて声を上げるオニキスを、ティエリアはぎゅっと抱き締めた。





言いせない感情

君を誰にも渡したくない。











Req≫切甘

20080103



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